京都府宮津市の日本三景天橋立を見下ろす山の中腹に成相寺の伽藍が広がる。
もともとは日本古来の山岳宗教の修験の場だった。
古くから願いが叶う寺として知られているようです。
境内で見かけた境内マップ
自分達は第二駐車場に駐車、一旦山門まで下ります。
西国三十三所の二十八番霊場として、古くから参拝者の絶えない山と云われます。
歴史も古く、寺伝では704年(慶雲元年)に真応上人により開基と伝わります。
1452年(宝徳4)に建立された、入母屋、瓦葺の赤い八脚の山門。
彩色や木組みも美しいけれど、木鼻を始め、各所に施された彫飾りに目が行きます。
両脇の仁王像
退色していますが1984年(昭和59)解体修復されたそうで、その際に内部から貞享、文政の頃の修理銘文が発見されパネルで紹介されています。
成相寺扁額
木鼻に施された獏?
こちらは獅子だろうか
虹梁の上に施された手の込んだ透かし彫りと彩色、門を一回りすることになると思います。
山門周辺の石仏、苔むした像は周囲に溶け込んでいます。
シャクナゲの木々が目に付きます、春にはピンクの花が彩を添える事でしょう。
ここから左手に細い参道が伸び、それを登っていくと五重塔に至ります。
成相寺御神木「タモ」の古木
樹齢300年以上と云われていて、さながら天に昇る龍の姿にも見え「竜神のタモ」とも呼ばれているようです。
御神木の先に艶やかな五重塔が聳えています。
優美な姿の五重塔、1998年(平成10)に鎌倉時代の様式のまま復元されたもの。
見るからに新しい。
訪れたのが11/15、本格的な紅葉には程遠いけれど、条件のいいところは赤く色付きを見せています。
五重塔の建つ境内に弁天池?
この池は弁天池とは呼ばれないようで、HPによれば蓮池と呼ばれ、別名「底なし池」と呼ぶそうです。
なんでもこの池には大蛇が住んでいたそうで、この大蛇(龍)は寺の小僧を次々に飲み込んでいったそうで、見かねた和尚は藁人形に火薬を詰め退治した言い伝えがあるようです。
小島には弁財天が祀られている。
蓮池(底なし池)に移り込む紅葉。
蓮池から参道を登ると石段の先に本堂、手前に鐘楼が見えてきます。
鐘楼
入母屋袴腰付きで素木を使った巧みな木組みの鐘楼、いつ頃建てられたものかわかりません。
しかし、この鐘楼には物語があるようで「撞かずの鐘」と呼ばれます。
撞かずの鐘の由来は慶長13年の銘が残る梵鐘にあるようです。
言い伝えによれば、1609年(慶長14)、古い梵鐘を作り替える際に付近の村々から寄付を募ったそうで、府中の村で一軒だけ、寄付を断った家があった。
実際に鋳造が始まると、二度続けて鋳造に失敗。
三度目の鋳造に取り掛かかった時、寄付を断った家の女房が赤子を抱え見に来ていたが、抱えた赤子が溶けた銅の中に落ちてしまった。
鐘は鋳上がり鐘楼に吊られたが、鐘を撞く度に悲しい音が鳴り響き、赤子の鳴き声に聞こえたという。
寺ではついにこの鐘を撞くのをやめたと言う。
このことから1609年(慶長14)には鐘楼は既に建っていた事になります。
観音堂
鐘楼の先の石段を上ると左側に建つ。
右に「一願一言の地蔵さん」
なんでも、唯一願いを一言でお願いすれば必ず叶えてくれるありがたい地蔵。
約620年前に彫られたものとされます。
堂内には西国三十三霊場の本尊が祀られています。
山門ほどではないものの虹梁の上に透かし彫りが施されています。
観音堂から最後の石段を上ると本堂のある境内へ。
入母屋造りで千鳥破風、軒唐破風が施された本堂。
成相寺の由来は『雪深い山の草庵に籠って修業中深雪の為、食糧もなくなり、餓死寸前となり、「食物をお恵み下さい」と本尊に祈りました。
すると傷ついた鹿が倒れていました、肉食の禁戒に悩んだ末、鹿の腿をそいで煮て食べました。
堂内を見ると本尊の腿が切り取られ鍋の中に木屑が散って居ました。
真応は観音様が助けてくれた事を悟り、木屑を拾って腿につけると元の通りになりました。
此れよりこの寺を願う事成り合う寺、成合(相)寺と名付けられた』
本堂右の二つの建物は右が十王堂、左に鳥居のある建物が熊野権現社
熊野権現社全景
覆屋の中に社が祀られているので、社全体は見ることができません。
鳥居の先で小さな狛犬が守護しています。
熊野権現社
1676年(延宝4)の上棟で、成相寺に現存する建築物としては最古のものだと云われます。
元々の本堂は現在地より山の上に建てられていたが、山崩れにより現在地に移転。
成合山パノラマ展望台に向かう途中に当時の建物の跡が今も残ります。
現本堂は1774年(安永3)の建築、入母屋造りで正面に千鳥破風、軒唐破風が施されています。
木鼻や海老虹梁、手挟に施された細かい彫り細工は見事なものです。
外陣の「左甚五郎」作の真向の龍
このモデルとされたのが蓮池(底なし池)に住む龍と言われ、このように正面を向いた龍は珍しいようです。
内陣の御前立の奥の厨子には平安期のものと伝わる本尊の木造聖観世音菩薩が安置されている。
本堂裏の紅葉を背景に吊灯籠がシルエットになり、なかなか綺麗な光景。
本堂左の地蔵群
鉄湯船
手水鉢として使われていますが、もとは湯屋の湯船として使用していたらしい。
直接ここに入る用途ではなく、沸かした湯を入れ、かかり湯をする目的に使われたそうです。
時には薬湯を沸かして怪我や病気の人を治療したとも云われる。
ここにも真向の龍がこちらを睨んでいます。
全ての参拝を済ませ、成合山の頂にある展望台へ。
一旦駐車場に戻り、車で向かいます。
途中古い伽藍跡などありますが、駐車余地が無いので車だとスルーとなります。
展望台からの眺め
宮津湾と天橋立が一望でき、ここからだとうねる龍の様に見えないようです。
とはいえ絶景そのもの。
展望台付近の開運土器盃投げ(3枚200円)、盃に願い事を書き、宮津湾に向いて立つ円形の枠に
投げ込み通り抜けるとその願いは叶うそうです。
これが結構難しい、夫婦一枚ずつ投げ各々失敗、二人の願いがこもった最後の一枚を託されると責任重大、風を読み投げた盃は見事通り抜けていきました。
願いは叶うぞ。
かみさんのリクエストで訪れたけれど、山門や本堂等見応えのある寺です。
シャクナゲの時期に再訪したいものです。
西国第28番「成相山 成相寺」
創建 / 704年(慶雲元年)
山号 / 成合山
宗派 / 真言宗
本尊 / 身代わり観音、聖観世音菩薩
住所 / 京都府宮津市成相寺339