「総門脇の屋根神さま」

名古屋市東区筒井1、尾張徳川藩菩提寺「徳興山 建中寺」がある。
普通にナビに導かれると恐らく三門に導いてくれるのではないかと思います。

三門の前の道路を隔て、南側に広がる公園は建中寺公園、桜の時期にはのんびりと花見ができる場所です。
その公園の南にポツンと総門が建っています。
もとはここを含めて建中寺の寺領。

f:id:owari-nagoya55:20200713170737j:plain尾張名所図会で描かれた建中寺伽藍、赤丸が鳥居のある位置になり、左にかけてが現在の建中寺公園。
入口となる総門の前は、周辺の道幅に比べ妙に広い。
その理由は後述するとして、この広い通りから総門を眺めると門の先に公園、更に先には三門を望める。

f:id:owari-nagoya55:20200713170759j:plainこの総門の右手に明神鳥居が目に留まると思います、今回の目的地はこの小さな社。
唐破風造りの社が南を向いて祀られています。
以前からあるのは知っていましたが、筒井天王祭を調べていて、この社が実は以前は屋根神さまだったと知り、おまけ的な取り上げ方から一つにしておくべき存在だなと感じ再訪しました。

f:id:owari-nagoya55:20200713170821j:plain1652年(慶安5)に建立された総門、その築地塀の右手に緑青に包まれ、注連縄の張られた銅葺の明神鳥居は目立つ存在です。
額束に社名は記されていないけれど、この社が屋根神さま。
幕も張られ、後は提灯が吊るされていればほぼ正装の装いに近い。

f:id:owari-nagoya55:20200713170846j:plain 笠木の両端の緩やかな反り上りは、小さな鳥居ですが存在感のあるものです。

この社がいつからここに祀られているのか、以前はどこに祀られていたのか?
具体的には定かになりませんが、web情報では1954年(昭和29)頃の道路拡張に伴いこちらに祀られることになったようです。

f:id:owari-nagoya55:20200713170909j:plain 総門南側の異様に広い道路を見据えるかのように高い台座の上に祀られてる社、唐破風造といえばいいのだろう、妻入の切妻屋根の全体が唐破風構造になったもので、正面から見ると中央が盛り上がり軒にかけて緩やかな曲線を描き下っていき、その先で跳ね上がり重厚感のある外観です。

屋根神さまと云えば、熱田社、津島神社秋葉社等が祀られているのを見かけますが、以前訪れた際は社の扉が開いており、津島神社の神札は見ましたがその他は目に留まらなかった。
今回は残念ながら扉が閉じられ神札は見られませんでした、筒井町天王祭の際には提灯が吊るされ、扉は開けられると思います、それを見てから祭神は書き加えよう。

この屋根神さまの祭礼が「筒井天王祭」であり、ここ建中寺門前を本陣とする神皇車と情妙寺前を本陣とする湯取車の二台の山車が無病息災・家内安全を祈り曳き回されます。
湯取車の納庫は情妙寺の西にあり、その脇にも屋根神様は祀られています。

筒井町天王祭、その日に車でたまたま遭遇すると、通行規制が入り「運悪る」とか思っていたが、山車のからくりも披露され、宵の奉曳では山車の提燈に火が入り幻想的でもあるようだ、何よりも総門の前には屋台が連なるそうです。(イカ焼き片手にビールしかないな、好きなやつだ)

普段は人通りの少ないこの通りもこの日ばかりは大賑わい、屋根神さまもその様子を眺めて微笑んでいるのではないだろうか。そして次の世代にもこの繋がりを受け継いでくれることを願っているやも。
由緒はきっと良く分からないかも知れないけれど、神社当番があり今も大切に受け継がれている。
繋いで行けるものがあるという事は素晴らしい事だといつも思う。

筒井町天王祭、2020年は6月6・7日の予定だったそうですが、このコロナ禍のご時世、中止になったようです。この禍の出口はいつ見えてくるのだろう。

「総門脇の屋根神さま」
創建・祭神 / 不明
住所 / ​名古屋市東区筒井1-11
公共交通機関アクセス / 市営地下鉄桜通線「車道」駅下車、北に徒歩10分程
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