岐阜県郡上市「戸隠神社」

岐阜県郡上市和良町宮地
国道41号線下呂から飛騨川沿いに下り、保井田交差点で右折し長いトンネル(ささゆりトンネル)の国道256線を和良川沿いに郡上方向に向かいます。

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やがて和良の集落に入ると国道沿いに「戸隠神社」の看板が目に止まり立ち寄ってみました。

41号線からここまで20分もかかっていなかったと思います。

 



釣り好きな方はご存知の和良川が町の中心を流れ、豊な森は川を育み渓流魚のみならずサンショウウオやムササビ、ヘビやクマも当然いる。自然豊かな地域。

道はこの先で二手に別れ、直進すれば郡上、右に行けば名宝へと続きます。
今はトンネルも出来、道路事情が格段に良くなったけれど、周囲を山に囲まれた山間地、どこに行くにも山越えで厳冬期は大変だったことだろう、まさに山郷。
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社頭全景
山間地の山里に真っすぐ伸びる参道、長閑な田舎の神社そのもの。
国道沿いの社号標と解説板、参道の左にそそり立つ大きな杉が目印か。
参道の遥か先に赤い鳥居も見えています。
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社頭の解説と後方の大木は戸隠神社の一本杉
・1874年(明治7)に戸隠神社に改称された、以前は九頭宮と呼ばれた。
・938年(平安後期)の美濃国神名帳に郡上郡七社のうちの1社「正六位上 国津明神」と記録が残る。
・郡上藩主の橘頼綱が国土安泰と戦勝祈願のために1272年(文永8)~1275年(建治元年)に亘り、大般若経600巻を写経奉納された。
大般若経の奥書の「九頭大明神御宝前」の記述が当時から既に九頭宮が存在していた事を示す。
・1569年(永禄12)、三木自綱が郡上へ侵入、戦利品として河尻新之亟利廣が飛騨に持ち去り千光寺(大野郡丹生川村)に寄進した、現在戸隠神社には残簡一部が存在する。
・1594年(文禄3)落雷により本殿、その他を焼失するが、1607年(慶長12)郡上藩主の遠藤慶隆によって社殿等再建。
郷中盛衰記の1840年(天保11)に和良街道道筋の大社として記されている。
・1960年(昭和35)銀幣社に指定。

祭神
手力雄命
・境内別社に御鍬社があり、1682年(天和2)の御鍬神廻国以来の歴史があり、祭神は豊受大神を祀る。

例祭
・10月前日土曜日、第二日曜日
天然記念物
・重ね岩、社叢、一本杉

主な文化財
・棟札等20枚、大般若経残簡、棟飾り一式、軍配一式・ 振板獅子頭二体、山犬狛一対、金泥馬酌一対、本殿金銅製御幣、九頭大明神篇額、十二支浮彫、鰐口・御神輿一式、舞台二棟

創建時期は不明ですが938年(平安後期)以前には既に何らかなの形で鎮座していたようです。
更に1873年(明治6)それまでの「九頭宮」から「上沢神社」へ社名を改め、翌年に現在の「戸隠神社」にに改称されたようです。
道すがらに出会い参拝によったけれど想像を超える古社の様です。

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参道を入ったすぐ左に建つ建物が社務所でその脇に手水舎があります。

その後方に道路から見えていた大きな杉が聳えています。
戸隠神社の一本杉と云われ岐阜県天然記念物に指定されています。
・938年(平安後期)に鎮座した頃は両脇に一対植えられたが東側が枯れ一本になった。
・樹齢千年以上で風雪や落雷などの自然災害から耐え、今も尚樹勢が衰える事はない、神社のご神木として住民から崇められ、守り続けられてきた。
・樹高約33㍍、幹回り約6.5㍍、樹齢約1000年と推測される。

ポツンと聳える一本杉、ここ宮地のランドマークといってもいいかもしれません。

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一本杉から更に参道を進むと右手に大きな参拝者駐車場が確保されています。

参拝者駐車場から神社全景
境内は真下から見上げると首を痛めるような見事な杉の巨木が大きな杜を形作っています。

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控え柱の付けられた両部鳥居、飾り金具が施され、笠木の反りが美しい。
大きな鳥居なんですが、両脇のご神木はそれを感じさせない程の大木、自然の息吹の凄まじいこと。

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斜めからの鳥居全景
周囲の環境と赤い鳥居の佇まいはお気に入りの鳥居の一つに加わりそうです。

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橘頼綱顕彰碑
元寇の役にあたって国難退散を願い大般若経を書き写し、1275年(建冶元年)九頭大明神に奉納。
・大半の大般若経高山市千光寺に所蔵されているが残巻の一部が宝物として残されている。
・この史実から地域のみならず国の「国家安泰」「天下泰平」の鎮守の社として厚く崇敬されてきた。

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境内右には舞台と小さなお堂

鳥居をくぐった左の夫婦杉、二本の幹の間をくぐると子宝に恵まれるとされる。
後方は神楽殿と思われます。

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拝殿正面全景
拝殿は平入の切妻

夫婦杉から見た境内全景
拝殿右手から後方にかけては山の傾斜が迫っています。
右手には多くの解説板があるようです。

f:id:owari-nagoya55:20201119152017j:plain拝殿右の解説

社頭と内容は同じの様です

こちらは文化財一覧、こちらも社頭と内容は同じの様です

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一本杉で見かけた和良パワースポットマップ
これを見る限り所謂パワースポットは全て戸隠神社にあるようです。
そこの中で本殿後方に磐座があるようです。

磐座の中で特にパワースポットとされるのが重ね岩とされているようです。
天の岩戸神話によれば、天照大神は弟の素佐之男命が高天原で乱暴を働いた事を憂い、天の岩屋に籠ってしまう。日の神を失くし、世界は暗闇に閉ざされ悪しき神々が横行、高天原神々が集まり知恵を出し合った。
その結果岩屋の前で踊り騒ぎ、天照が興味を示し顔を出したところを手力雄命が引きずり出す作戦を立て
た。作戦は成功し天照は岩屋から出され再び世は光に満ち溢れた。
その岩屋から引きずり出す際、手力雄命は岩屋の扉(岩)を放り投げたという、その扉は信濃戸隠山(戸隠神社)まで飛んで行ったという。
天の岩屋から飛んでいく途中、その欠片が落ちて重ね岩の上に乗ったとされる。
下の岩に乘った欠片の重さは42トン、奇跡のバランスで片手で回す事ができた(現在は立ち入り不可)そうです。そのことから天下の奇岩、祈願の岩として崇められている。
確かに戸隠神社までの直線上に戸隠神社(…ややこしや)が位置しているようだ。

f:id:owari-nagoya55:20201119152055j:plain手水舎と拝殿前の石灯篭
・江戸時代後期宮地村の百姓六衛門が立身出世し近藤勘十郎と名乗り生糸生を開業し富をなした。
九頭大明神の厚い崇敬者だった勘十郎は神社へ多大な寄進を行った。
・彼が寄進したもので現存するのがこの石灯篭とからくり山車二台である。
・石材は八幡町の小樽石を使用したと云われ、石材の搬送は堀越峠の難所と云われた地獄谷を氏子達に担がれ運ばれてきた。
・勘十郎はその他にも宮地村島田に水田など故郷に多くの寄贈を行った。

大成した者は、ひたすら富を蓄え続けるだけではなく、自分を育んだ故郷に貢献するという事です。

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拝殿前の狛犬は黒ずんでいて、風格を備えた姿です。

f:id:owari-nagoya55:20201119152137j:plain本殿域全景
正面に本殿、祭神は手力雄命を祀る、扉を放り投げた神様です。
左に別社
豊受大神を祀る。

f:id:owari-nagoya55:20201119152153j:plain拝殿右の九頭の磐座方面から捉えた拝殿。
なかなか拝殿と本殿を一枚に纏める事はできない。

f:id:owari-nagoya55:20201119152210j:plain本殿と別社
どちらも素木の流造、派手な彩色はないけれど彫飾りには手がかけてあるようです、これ以上は寄れません。

f:id:owari-nagoya55:20201119152229j:plain岩座へは拝殿右から本殿脇の斜面に道が付けられ、斜面に大きな岩が並んでいます。
男岩、女岩、結岩、欠片が乗った重ね岩などがあります。

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重ね岩
手力雄命が高千穂から飛ばした天の岩屋の欠片が乗る重ね岩。
本殿右脇の巨石の上に注連縄が巻かれ岩が欠片です、少ない接地面で見事に安定を保っています。
どうしてこうなったかやぼな考察は置いといて、ともかく不思議な現実には驚く。
絶妙なバランスの欠片は地震でも落ちる事はなく、落ちないという事から合格祈願に訪れる方は多いと云います。


横岩

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結岩

滝口岩、その右奥に女岩

こうした斜面に曲岩、男岩等が点在し九頭の宮の磐座として崇められています。
杉の大木が作り出す静まり返った杜の空間には凛とした空気が漂い、何かの気配を感じる。

気配…神?熊?猪?、何がいても不思議ではない。

f:id:owari-nagoya55:20201119152332j:plain鳥居から現実の世界に戻ると長閑な山間地の風景が広がります。
一本杉の下には彼岸花が盛りを迎える頃。
2020/9/28 

戸隠神社
創建 / 不明
祭神 / 手力雄命
住所 / ​岐阜県郡上市和良町宮地1-1