「嘉例川駅」JR肥薩線

鹿児島県霧島市隼人町嘉例川にある、JR肥薩線無人駅「嘉例川駅

f:id:owari-nagoya55:20201222211855j:plain 山深い場所の様に見えるけれど、台地の上にある鹿児島空港から車で15分もあれば、こんな長閑な風景があります。
写真は駅舎から150㍍程手前の高台に観光客用として大駐車場が整備され、ここから歩いたところで知れています。
駅舎前は駐車禁止で路線バスのロータリーでもあり、物見遊山の駐車はこちらが迷惑にならない。

f:id:owari-nagoya55:20201222211917j:plainこの看板脇から高台から降りる階段が整備され、歩道は駅舎へと続きます。

f:id:owari-nagoya55:20201222211938j:plain 駐車場突き当りから駅舎への遊歩道。
山々に囲まれ、緑に包まれた光景の中に一本の線路が伸びています。

f:id:owari-nagoya55:20201222211958j:plain 歩道から嘉例川駅方面の眺め。
周辺の木々は桜、春には桜のトンネルの中を電車が走っていく。

f:id:owari-nagoya55:20201222212019j:plain 歩道はやがて公園に続き、その先が駅舎のあるバスのロータリーに続きます。
この辺り、その昔はこの駅で降車し妙見温泉へ湯治に向かう人で賑わいを見せたそうですが、今は駅舎を目当てに訪れる観光客が主の様です。
往事の賑わいも今はなく、静かな山間の駅、生まれ故郷に戻ってきたような懐かしさすら感じる。

f:id:owari-nagoya55:20201222212039j:plain 霧島ジオパークの解説板。
宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島山を中心とした北西-南東方向の30㌔ × 20㌔の範囲にある20あまりの火山が密集する地域をこのように呼び、有史以前から現在に至る火山活動の歴史やそれにより育まれた自然の多様性、そこに暮らす人々の歴史や文化を案内するものです。
鹿児島を訪れ、桜島から始まり、開聞岳霧島山とこの地は生活と火山はとても身近存在。
嘉例川駅はこの地図の左下あたりになります。

f:id:owari-nagoya55:20201222212100j:plain 駅前ロータリーから駅舎全景。
このレトロな外観の駅舎、無人駅でありながら特急が停車する珍しい駅。

f:id:owari-nagoya55:20201222212119j:plain 駅舎は県内最古で登録有形文化財に指定され、地元自治体が所有管理されている。
歴史を辿ると1903年(明治36年)に営業を開始、当時は妙見温泉への入口の駅として賑わったものの、やがて1984年(昭和59年)に無人化され、「嘉例川駅」開駅100周年にあたる2003年に有志の方々による祝賀会をJR九州に具申したそうですが無人駅ゆえに相手にされなかったそうです。
しかし自力で賛同者を集め、祝賀会を開催し多くを集客したことから、2004年(平成16)に特急列車「はやとの風」の停車駅となり、約5分間停車し停車時間内に駅舎の見学や記念撮影などができるようになり認知度が上がったようです。
地元から愛される駅舎は2004年に旧隼人町が買い取り、駅弁や猫の観光大使など注目を集めるPR活動が盛んに行われているようです。
それら地元の思いは2006年登録有形文化財、翌年の2007年には 南九州近代化産業遺産群の物資輸送関連遺産のひとつに指定されるなど実を結びその価値が認められ今に至るようです。

f:id:owari-nagoya55:20201222212140j:plain 昔ながら土間の待合室、そこにある長椅子は昔は結構見かけた記憶があります。
なんだか懐かしいものが今も現役で残っています。

f:id:owari-nagoya55:20201222212159j:plain 待合室の時計も今だ現役で時を刻んでいます。

f:id:owari-nagoya55:20201222212222j:plain 駅舎の照明も白熱電球、昔のままなのでデザインは建物にマッチしています。
LEDにはない色合いと温もりがあります。

f:id:owari-nagoya55:20201222212250j:plain 待合室の左の執務室が展示スペース、その奥は入れませんが中には過去の駅名標タブレット閉塞器が無造作に置かれています。
昔、電車の乗員が輪っかの様なリングを駅員に渡していたのを記憶しているけれど、それをこの閉塞器にセットして単線路線で複数の列車が走らないように制御をしたものらしい。
赤い開閉器の塗装の朽ち方がこの駅の歴史そのものかも知れない。

f:id:owari-nagoya55:20201222212311j:plain 嘉例川観光大使「たぬき猫 にゃん太郎」
ウナギイヌは知っているけれど、たぬき猫とは新種の猫?
ンな訳はない、目の周りのマークがたぬきを連想させたのでしょう
本人は知る由もないだろうがもう少しなんとか・・・でもやっぱり狸か
今は天に召され、観光大使の重要なポジションは空席の様です

f:id:owari-nagoya55:20201222212333j:plain ホームから「きりしまおんせん」方向の眺め、線路は真っすぐに続き山に吸い込まれていきます。
この先の大隅横川駅嘉例川駅同様に開業当時の駅舎で、戦時中の機銃掃射を受けた柱にはその跡が残るそうです。
山郷の無人駅の趣は嘉例川駅の方が味わえるのかもしれません。

f:id:owari-nagoya55:20201222212354j:plain 現在掲げられていた駅名標
古びた梁の木目と黄ばんだ漆喰壁もこれはこれでいい。

f:id:owari-nagoya55:20201222212412j:plain「なかふくら」方向の眺め
線路の左に長く続く石積みは、以前使われていた列車交換用のプラットホーム跡で、線路が撤去されホームの面影は残っていませんが、その長さは現在のホーム以上あるのでは。

このホームから列車に乗り夢を求め、山郷から町に出る、なんだかイルカやアリスの歌詞が浮かんでくる光景です。
古いから新しいものに変えるのもいいかもしれない、古いものには其々の思い出も残っていていいものだ。

JR肥薩線嘉例川駅
住所 / ​鹿児島県霧島市隼人町嘉例川2176
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