静岡県浜松市「秋葉山本宮秋葉神社 上社」

秋葉山本宮秋葉神社」は、静岡県浜松市の標高約866mの秋葉山の山頂付近に鎮座する。
上社と麓の下社を構え、日本各地の秋葉神社総本宮

赤石山脈遠州平野に突出した南端に位置し、先に掲載した秋葉山南東麓を流れる気田川の畔にある下社、そこから通じる古い参道を徒歩で1時間半から2時間かけて標高差約750㍍を山頂まで上ると上社がある。
往古はその参道を登り山頂まで詣でていて、麓には参拝者(秋葉道者)の旅籠が軒を連ねたという。
下社周辺にもそうした名残を感じる。時間に余裕があれば下社から徒歩で訪れたいところです。

現在は車で西側山麓天竜川沿いを国道152号線(工事が多い)と県道285号線を経由し、狭くて曲がりくねり、傾斜はきついが舗装された天竜スーパー林道を上れば20分ほど上っていけば大鳥居のある第一駐車場まで容易にアクセスができる。

f:id:owari-nagoya55:20210210200613j:plain写真は県道285号線から上社参道口に向かう天竜スーパー林道入口の石標。
ここから上りが始まります、白黒の人慣れした猫が出迎えてくれた。

f:id:owari-nagoya55:20210210200637j:plain軽自動車で来たけれど、きつい上り坂にエンジンも悲鳴を上げる。
それも20分程の辛抱で第一駐車場に到着。
駐車場から大きな狛犬が守護する大鳥居と山頂に石段が続く。

f:id:owari-nagoya55:20210210200659j:plain大鳥居の額、秋葉神社と云えば「七葉もみじ」。

f:id:owari-nagoya55:20210210200720j:plainここから上社までは、秋葉杉の生い茂る山肌に作られた新しめの石段が続く。

f:id:owari-nagoya55:20210210200741j:plain秋葉山本宮秋葉神社」境内案内図と由緒。
祭神
火之迦具土大神伊弉諾伊弉冉の御子で火の主宰神。
創建
秋葉山赤石山脈遠州平野に突出した最南端、天竜川上流に位置し、山頂に秋葉山本宮秋葉神社を祀る。上古より火の神様を鎮る御神体山として崇敬され、初めて社殿が建ったのは和銅2年(709年)。
社号
上古は岐陛保神ノ社」と称し、中世は「秋葉大権現」と称した、明治初年権現の号を改め「秋葉神社」へ。
昭和27年全国の秋葉神社総本宮である事から「秋葉山本宮秋葉神社」に改称。
神徳
火防、開運の神として火災削除・家内安全・厄除け開運・商売繁盛・工業発展の霊験があらたか。

身近で見かける社はこちらで授かった御札が祀られる。

f:id:owari-nagoya55:20210210200803j:plain参道の秋葉杉の木立からは遠州平野を一望できる。

f:id:owari-nagoya55:20210210200824j:plain秋葉山の豊かな杜は人の手により作られ、そこには普段お目にかからない草花や野鳥達を育んでいる。

f:id:owari-nagoya55:20210210200847j:plain紅葉坂を過ぎると正面に「西ノ闇の神門 」が現れる。
2005年、鎮座1300年を記念し参道と共に建築された新しいもの。

上社伽藍は火災により焼失を経験していますが、下社から続く参道には唯一火災を免れた古い神門が残っています。それ以外は本殿の1986年(昭和61)の再建始め近代再建されたもの。
長い年月を経た趣を求めてはいけない、建物の歴史はこれから積み重ねて行く。

f:id:owari-nagoya55:20210210200908j:plain「西ノ闇の神門 」
二層入母屋の地元の天竜杉を使用し丁寧に作られた木造建築。
築後年数を経ていないけれどコンクリートにはない素木の温もりが伝わってくる。

f:id:owari-nagoya55:20210210200930j:plain左右の間には白鮮やかな髄神像が安置されている。

f:id:owari-nagoya55:20210210200951j:plain神門には四方を司る四神の大きな彫が施されている、正面の北の玄武(左)と西の白虎(右)。

f:id:owari-nagoya55:20210210201016j:plain後方には南の朱雀と東の青龍が施されている。
築後年数は浅いけれど既に風格すら備えた見事な門です。

f:id:owari-nagoya55:20210210201040j:plain神門から右に進み秋葉茶屋を過ぎると天狗みくじと札所がある。
左の樹はジャニーズアイドルの参拝記念植樹だそうな。

f:id:owari-nagoya55:20210210201102j:plainその左手に手水舎。
ここからの眺めも絶景、あと少しで頂きに建つ本殿だ。

f:id:owari-nagoya55:20210210201125j:plain手水舎の先には石垣の積まれた境内があり、そこには黄金色の明神鳥居が光り輝いている。

f:id:owari-nagoya55:20210210201145j:plainキンピカの鳥居。
赤があるのだから金もあってもいいのだろう。
作法は茅の輪くぐりの要領、左廻り、右廻り、左廻りと願いをかけつつ8の字を書くように三度くぐり抜ける。目の前に本殿が見えなければ回りが足りないという事です。

f:id:owari-nagoya55:20210210201204j:plain幸福の鳥居と呼ばれるこの鳥居、受け狙いで建てたものではなく、再建される以前より勅額を掲げた金銅の鳥居があったようだ。

f:id:owari-nagoya55:20210210201228j:plain鳥居をくぐった境内の眺め。
正面の本殿に続く石段の右手に神楽殿(1992年竣工)とその奥の石垣の下に七社の社が祀られている。
左は授与所とこちらにも三社の社が祀られている。

f:id:owari-nagoya55:20210210201249j:plain石段左
手前の岩は神恵岩。
秋葉山系から産出した巨大な火打石でここから切火をして厄除け、清め、大願成就を記念するそうだ。
手前賽銭箱にある打ち金で神恵岩を打ち付け、火花が飛び散れば切火完了。
滅菌用のアルコールは引火するのでくれぐれもお気をつけて。
後方の三社は左から祓戸社、内宮社、外宮社。
千木に外削ぎ内削ぎの違いはあるけれど、鰹木5本の神明造の社殿。

f:id:owari-nagoya55:20210210201310j:plain石段前の狛犬
阿形の右奥に見える社殿は手前から天神社、水神社、山姥社、小國社、風神社、白山社、山神社と並ぶ。

f:id:owari-nagoya55:20210210201331j:plain秋葉山山頂の神域を背にして建つ社殿。
入母屋造の拝殿には唐破風向拝が施され、拝殿は幣殿に繋がる権現造。
この社殿も1986年(昭和61)に再建された総ヒノキ造り。
屋根の反りは羽ばたく鳥の翼の様で優雅な佇まい。

f:id:owari-nagoya55:20210210201353j:plain向拝下の彫飾りは干支。
右から左に毎年彫飾りが付け替えられて行き、中央がその年の干支。
既に来年に向け配置が変えられているようです。
それでは参拝、いつものように僅かな賽銭大きな祈願。

f:id:owari-nagoya55:20210210201414j:plain社殿左からの斜景。
本殿は流造、屋根は折り重なるように連なり、正面とは違い複雑な造形を魅せてくれる。

秋葉山本宮秋葉神社は江戸時代までは秋葉権現を祀る秋葉権現社と、観世音菩薩を本尊とする秋葉寺が境内にある神仏混淆として成り立っていたようです。
1872年(明治5)の神仏分離により秋葉神社に改め祭神を火之迦具土大神として、三尺坊を仏教の秋葉寺に分離した。
1943年(昭和18)、麓から発生した火災の延焼により上社本殿東側にある山門を除き全ての建物を焼失したようです。上社再建まで祭祀を継続するため麓に作られたのが秋葉神社下社だといいます。

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本殿域から幸福の鳥居と天竜川方向の眺め、持ってないな・・・

幸福の鳥居、帰りの作法はどうなんだろう。


嘗ては下社から1日がかりで参拝した火を司る神の山、当時を思えばお手軽に訪れることが出来る。
しかし見逃した神門もあるだけに、次回は足ごしらえして下から登って訪れたいものだ。
そうして眺める山頂から景色はきっと別物だろう。

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秋葉山本宮秋葉神社
祭神 / 火之迦具土大神
創建 / 709年(和銅2)
境内社 / 祓戸社、内宮社、外宮社、天神社、水神社、山姥社、小國社、風神社、白山社、山神社
住所 / 静岡県浜松市天竜区春野町領家841
車アクセス / ​下社から県道286号線、天竜スーパー林道経由約50分程
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