高島市マキノ町 part3「大處神社」

滋賀県高島市マキノ町
延長2.4㌔のメタセコイア並木で知られる高原です。

この地を訪れた3月21日。
暑さすら感じる街とは違い琵琶湖北端の山間に位置するこの辺りでは気温も周囲の景色も随分と差があります。
冬枯れたメタセコイア並木も今頃は新緑が鮮やかな時期を迎えているはず。
part3となる今回は大處(おおところ)神社となります。

大處神社へはマキノピックランドに車を駐車、県道287号線沿いを南に20分程歩けば社頭に辿り着けます。
目的地の目印は高原北側の森西集落。

県道沿いに写真の「式内社 大處神社」の社号標、ここから県道を外れ集落に続く車道を進みます。
やがて右側に森西薬師堂が見えてくれば大處神社は目の前です。

大處神社社頭全景。
石の明神鳥居と常夜灯、右に「式内 郷社 大處神社」の社号標がある。
社頭前に駐車可能な余地がありますが、公に参拝者駐車場とは書かれていません。
集落は幅員の狭い道路が続くので2、3台程度なら迷惑にはならないかと思います。

鳥居扁額、おおところ神社。

参道から本殿方向の眺め。
長い参道の途中に一対の狛犬と少し先の神橋(みやがわばし)を渡ると拝殿、本殿の伽藍がある。

伏せ耳で角持ちの狛犬は鬣が纏めて刻まれ、風貌は西洋の音楽家のようでなか〃格好いい。
寄進年度は未確認。

参道には二つの神橋が架かり手前の橋の先に石の神橋が架けられている。

神橋を渡ると右に手水舎と社務所

龍は絶え間なく清水を鉢に満たし、生き生きとした姿で本来の仕事をしている。

境内中央は拝殿?、中に三つ巴が描かれた吊り太鼓が架けられているので神楽殿かもしれない。
入母屋瓦葺の妻入りで雪深い土地柄もあり四方はガラスの引き戸になっている、そのため拝殿内は陽光が差し込み明るいもの。
拝殿奥は赤い鋼板葺の社が二棟と少し離れた右手に稲荷社が祀られている。

拝殿後方の二社。
流造で大きさはほぼ同じの二棟、右の社殿が本社の大處神社、左が境内社の酒波神社。
大處神社の祭神は大地主神(大国主命)、左の酒波神社は素盞嗚尊を祀る。
まずは参拝させてもらいます。

大處神社
創祀年代は670年(天智天皇9)とされる延喜式内社。
元は国主大明神と称し大地主命(大国主命)の荒魂が祀られていたという。
往古のこの地、高島郡十郷のひとつ大処郷とされ大處神社はその総社にあたる。
尚且つこの一帯は嘗て森西城もあり、この立派な社殿はそうした事もあるのだろう。
大棟には千木や鰹木はなく巴紋が飾られていた。

昔は、祈年祭に猪を奉納する習わしがあったそうで、猪が捕れない時は代わりに調布八反を奉納したという。
写真に撮らなかったが神社周辺の民家の庭先に怪しい骨が置かれていたのを思い出す、あれはこの祈年祭に繋がるものなんだろうか。
地元のおばあちゃんが云われていた「出雲からお越しになり、45代(48だったか?)続く古いお宮さんで白猪白馬白鶏を供えて神様を祀った」という事がここで結びついて来た気がする。

素木の社殿ながら至るところに彫が施され、職人の技が光っている。

木鼻はもちろん、蟇股、手挟など手間を惜しまず彫が施されている。
残念なのは部材の傷みが痛々しい。

左右の脇障子、虎と仙人、右のピンボケは鬼のようにも見えるがなんだ?よく分からない。

昭和初めに出版された高島郡史にの当時の大處神社の写真が掲載されていた。

拝殿は切妻の四方吹き抜け、後方の本殿の姿も少し今とは違うような。
大處神社
創建 / 670年(天智天皇9)
祭神 / 大地主命(大国主命)

酒波神社。
ぱっと見は同じ様に見えてしまう。

社伝によれば創建は1349年(貞和5)で日置神社の論社という。
祭神は素盞嗚尊。
酒波神社の大棟も千木や鰹木はないが、五三桐の紋が飾られていた。

大處神社の本殿同様至るところに彫が施されている。

「先の写真と同じじゃない」と思われるかもしれない。
けれど彫飾りをよく見て行くと似てはいるがモチーフの違う別物です。
同じなのは部材の傷み具合、こちらも痛々しい。

酒波神社本殿の脇障子。

右は龍のように見える、左の彫は顔の部分が隠れてさっぱり分からない。
酒波神社
創建 / 1349年(貞和5)
祭神 / 素盞嗚尊

大處神社本殿左に極楽寺へ抜ける脇参道があります。

その参道脇に赤い鳥居を構えた稲荷社が祀られていた。

切妻瓦葺で妻入りの覆殿は妻側に向拝が付く。

覆殿内は朱塗り、杮葺き流造で朱塗りの本殿と一対の狛狐。

右には「伏見稲荷大社 必勝 守護」の御札が納められていた。

境内から社頭の眺め。
この左側に地元のおばあちゃんに声掛けされた極楽寺が鎮座する。
この時期でありながら廻りには雪が残り、山々が迫る、猪以外にもいろ〃といそうな雰囲気だ。
実に自然豊かでいい土地柄だ、並木通りを走り去る車やバイクの爆音はこの光景に似合わない。

大處神社
創建 / 670年(天智天皇9)
主祭神 / 大地主神
本殿 / 流造
酒波神社
創建 / 1349年(貞和5)
祭神 / 素盞嗚尊
本殿 / 流造
境内社 / 稲荷社
創建 / 不明
祭神 / 不明
本殿 / 流造
所在地 / 滋賀県高島市マキノ町森西175
公共交通機関アクセス / JR湖西線近江中庄」下車 ​徒歩40分
徒歩ルート(マキノピックランドより) / ​​​25分前後
参拝日 / 2022/03/21