『柯柄八幡神社』​​岐阜県下呂市金山町

金山町内の筋骨巡りの際立ち寄った柯柄(えがら)八幡神社
 町内を通り過ぎ国道41号線の「十王坂」交差点を直進した右側に鎮座する朱色の両部鳥居が印象に残るこの地区の氏神様である。

 社頭の前の通りは下呂バスが運行され、目の前に「八幡神社前」バス停がある。
バス停の前に朱も鮮やかな両部鳥居を構え、右側に「銀幣柯柄八幡神社」の社号標が立つ。
 鳥居から先は杉の木立沿いに緩やかな勾配を持つ参道が続く。  

奥にばかり視線が行って気が付かなかったが、参道は道路を隔てて先に伸びているようで、左右で狛犬が守護していた。

社頭の由緒書き
 祭神 八幡大神応神天皇
相殿 白山大神、菊理媛神伊邪那美命伊邪那岐命
 相殿 柯柄天神、菅原道真

由緒
 「901年(縁起年間)、この地の氏神として八幡大菩薩、白山大権現が祀られていた。
1411年(応永18)飛騨の乱がおき、飛騨の國氏姉小路伊綱を誅伐するため、将軍足利義持の命を受けた源高員が諸勢を催し、濃飛の国境である当村で一泊した。
 その際、高員が里長に「当村の氏神如何」と尋ね、里長が「八幡宮なり」と答えると、高員は「八幡大神源氏累代の守護神なり」我は鎌倉荏柄天神の氏子なり怨敵退散のため、荏柄天神を勧請し戦勝を祈願された。
無事平定し帰陣の際、再び当地に滞留し、別当里長に褒賞を与えられ以後荏柄正八幡宮と称え、八幡大神、白山大神、柯柄天神の三神を守護神として祀る様に言い残し鎌倉に戻っていったという。
 翌年2月、鎌倉から梅桜の寄進を受け御神木として崇め奉られた。
この後、社殿を改築荏柄天神の分霊を合祀し柯柄正八幡宮と改められた。
 明治初年柯柄八幡神社に改め1961年(昭和36)銀幣社となる。
境内社 柯柄稲荷神社、古峯神社、津島神社、庚申様
 祭杞 例祭4月」

一ノ鳥居。
 木造の両部鳥居で笠木の緩やかな反りが美しい。
柱は丸柱、控え柱は八角柱が使われ手間が掛けられた美しい姿をしている。

額は「柯柄 正八幡宮

鳥居をくぐったすぐ左に小さい社が祀られていたが詳細は分からなかった。
 後方の案内板は当社文化財を紹介するもの。

「柯柄八幡神社文化財
 金山町指定重要文化財(指定昭和48年)
・社叢(天然記念物)
 境内の面積5,500㎡、老杉、欅など43本が立ち並ぶ。
中には目通り4㍍以上のものもあり森厳さを保つ神域。
狛犬(彫刻)
 応永18年(1411)、荏柄八幡宮となる以前から神殿に安置されている木製の狛犬鎌倉時代(12世紀末)の作と推定される。
・黒獅子頭(工芸品)
「お宝獅子」とも云われ高さ17㌢、黒色の獅子頭としては最も形態で慶長年間(16世紀末)作と推定される。
・高杯(工芸品)
 神前に供える供物器で、7個あり、内3個に正徳3年(1713)の年号が入る。
・智拳院跡(史跡)
 智拳院は、修験者別当大日坊の後、戦乱の為しばらく中断していたが、鎌倉生まれの修験者で真言宗の山伏晋覚院泰響法師が当地を訪れ、元亀3年(1573)別当となり、修験道場を開いて以後、明治7年(1875)まで9代300年に渡り、当神社の社職を務めた別当の住居と祈念所なっていた。
・宝筐印塔(史跡)
 別当代々の墓は神社左の坂道を10㍍程登った所にあり、中央石垣に江戸時代初期の宝筐印塔(96.5㌢)が安置されている。」

参道右の庚申塔と後方に「居ながらに聞くや四郡のほととぎす」と刻まれた句碑が立つ。
 (四群とは武儀、益田、郡上、加茂を指す)

緩やかに登る参道はニノ鳥居、拝殿に続く。
 右手に手水舎と力石が置かれている。

 

手水舎と力石。
 力石は江戸時代から鳥居前あって、祭休日に村の若者が集い力比べを行ったもので、明治末期まで行われたという。


龍口
 青々とした体に鋭い爪を持ち厳つい表情。


 境内左で見かけた二つの倉庫?、智拳院跡附宝筐印塔の柱が立っていたが宝筐印塔はこの中?

 手前が社務所、奥の建物も祭礼で用いる神具の保管庫か。

参道中ほどの石段の先にニノ鳥居、石造の明神鳥居があり、左右で狛犬が守護している。

ニノ鳥居と拝殿。
 境内は山の傾斜に合わせ何段かに分かれている。

ニノ鳥居前の狛犬

石造の額は「柯柄正八幡宮

鳥居をくぐると境内は広がり、訪れた時には夏の風物詩「茅の輪」が立てられていた。
 木陰を出ると強烈に暑い(当たり前だろ!)、しかし湿度が若干低いのか、木陰に入ると心地よさすら感じるところは名古屋とは少し違う。
一段上がった境内に入母屋瓦葺の四方吹き抜けの拝殿が建つ。

素木造りでシンプルな拝殿、それに合わせる様に柯柄正八幡宮の額が掛けられている。
 拝殿内壁の全周に百人一首の奉納額が飾られている。

一部の額には安政(1854~1860年)の頃奉納された額も見られ、古くからこの地の住民から崇敬されているのがよく分かる。
 拝殿後方の深い杜からウグイスの鳴き声が聞こえてくる。
携帯で録音してみたが…、人の聴覚には及ばなかった。
 神紋は並び矢のようだ。

柯柄八幡神社伽藍全景。
 拝殿後方で境内は一段上がり、そこに幣殿が建ち、その先に本殿がある。

左右に二対の狛犬が守護する幣殿へ続く石段。
 その両脇には立派な幹回りの杉の神木が聳えている。

年号を見忘れましたが二対の狛犬は小振りで比較的新しい。
 手前の狛犬の視線はやや下向きで拝殿方向から訪れる参拝者を見据えているようだ。

幣殿。
 瓦葺の木造切妻造で平側に向拝が付く。
幣殿内にも古びた柯柄正八幡宮と記された黒漆塗りの額が掛けられていて、本殿方向に階段が続いています。
 その中ほどに一対の狛犬が見える。
質感はいかにも木、頭には角を持つ様だ、解説にあった鎌倉時代(12世紀末)から安置されてきた木製の狛犬とはこの事だろうか。

幣殿左からの眺め。
 赤い鳥居は柯柄稲荷神社のものだろう。

鳥居の先に二つの社が祀られていた。
 社頭の解説では境内には柯柄稲荷神社、古峯神社、津島神社とあったが全て社名札がなくよく分からない。
台座の脇に小さな狐の姿が見られるのでどちらかが柯柄稲荷神社だろう。

柯柄稲荷神社から右手を眺めると柯柄八幡神社の本殿の姿が望める。
 銅板葺の三間社流造の三社相殿。
朱が塗られていた感じはなく素木?、木鼻や妻壁に彫飾りも施されているが、派手な飾り金具もなく、落ち着いた佇まいだ。

全ての参拝を終え、神社を後にしよう。 

熱い陽射しが降り注ぐ社頭。
 影をトレースしながら飛騨金屋駅に向かおう。
飛騨金山で長い歴史を持ち、古くから人々に崇敬されてきた柯柄八幡神社、赤い両部鳥居が印象的な居心地のいい神社。

柯柄八幡神社
創建 / 901年(延喜年間)
祭神 / 応神天皇菊理媛神伊弉諾尊伊弉冉尊菅原道真
境内社 / 柯柄稲荷神社、白山神社津島神社
参拝日 / 2022/6/29

所在地 / ​​岐阜県下呂市金山町金山字神戸平2490​​
飛騨金山駅から徒歩ルート / ​南西へ15分程
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