『萬松山 観音寺』名東区上社3

萬松山 観音寺

名東区上社3の津島社から南西に2~3分程行くと左側に城壁の様に高く積まれた石垣が見えてきます。
 そこが萬松山 観音寺になります。

観音寺西側から伽藍を見上げる。
 目の前に続くこの石垣沿いを東に進むと門前に至ります。

観音寺について、時に室町時代前半に当地周辺にあった上社城の跡地に鎮座とされ、Gマップにも上社城址として現れる。

 この上社城の城主は加藤勘三郎とされ、勘三郎の死後、加藤勘三郎(世襲名)が高針城を築城し拠点を移した事から上社城は廃城の道を辿ったと云う。

城の所在地は当時前山と呼ばれた場所にあった事から前山城とも呼ばれたと云うが、上社城の正確な場所は定かではないのが実際のところかもしれない。

観音寺を訪れ、高く積まれた石垣を見ると城の痕跡と思いたくなるが、石積みを見ていくとしっかりと水抜きパイプを備え、近代に積まれた石垣なのが分かります。

 観音寺について名古屋市の史跡散策路「柴田勝家コース」によれば以下の様に紹介されていた。

「1667年(寛文7)に臨済宗の寺として開かれました。
 本堂の西脇に1191年(建久2)の創建といわれる観音堂があり、城東観音21番札所となっています。
厨子に収まる十一面観音座像は17年ごとに開帳されます。
 本堂の前庭にはクロガネモチの大樹(市指定保存樹)が茂っています。
山門下石段の左脇に石造馬頭観音があります。これは、かつて上社にいた岩木を運ぶ馬方が建てたようです」

とあった。

上は尾張徇行記から観音寺を一部抜粋したもの、この記述の中から十一面観音座像は行基作とあり、それは山田左衛門の守本尊とある。

 山田左衛門?
調べて見ると高針城城主加藤勘三郎は、本能寺の変で京都二条城で自刃した主君の織田信忠の元に向かいそのまま消息知れずとなった。

 城主不在の城を守っていたのが家老の山田左衛門だと云われる。

彼は上社城内にあった観音堂を領内の円福寺に移し、名も観音寺に改めたのが観音寺の始まりのようです。
 上は弘化4年(1847)に描かれた上社村絵図で、大きな円が観音寺、城は描かれていないけれど小さい円の中に城山の地名があり、恐らくこの辺りに城があった?と感じたくなる。
また、尾張志には「上社村西島といふ人家南の前山という地にあり」と記され、観音寺鎮座地、周辺に前山と名が残る場所に出会えなかった。
 上社一帯の現状は大規模な造成が行われ、傾斜地は残るが城の痕跡らしきものは残っていない。

南側から近代工法で建てられた本堂と手前の観音堂を見上げる。

 石垣の上に祀られた小さな祠には馬頭観音を安置する。

山門前からの眺め。
 左に観音寺、右に萬松山と刻まれた石標があり、古い石段が山門に続く。

古びた馬頭観音堂。

内部に安置されている馬頭観音
 これが史跡散策路で紹介されている馬頭観音像の御顔。
上社周辺の馬方が荷役作業や主役となる馬の安全を願い寄進したもので、台座には「馬持連中」と彫られている。
 周辺の変貌に伴いこちらに安置されたものか?
年代は確認できなかったが、しっかり彫り込まれ険しい表情が見て取れる。
 以前は像全体が彩色されていたようです。

山門。
 瓦葺の薬井門で比較的新しいものだった。

山門から南の街並みの眺め。
 ここんところの台風の影響から沈んだ空模様。

臨済宗 妙心寺派 観音寺。
 山門から境内の眺め、石畳は左に続く。

本堂伽藍。
 入母屋瓦葺で軒先の反りが綺麗な本堂。

本堂。
 大きく迫り出した向拝と軒の滑らかな曲線の連なりが綺麗な建物。
手前の看板には「十一面観世音菩薩 御開帳 平成26年10月2日より7日間」とある。
 17年毎の御開帳なので次回は2031年となる…そんな先のこと、何が起こるか分かるまい。

本堂額。

本堂から境内南の眺め。
 左が山門、その右には地蔵さんや観音さまを安置する堂、右が観音堂

入母屋銅板葺の観音堂
 右手に笠が置かれたまま…

なるほど、笠の下には小さな地蔵さん、思いやりだよね。
 この手の地蔵さん、どうも響くものがあり駄目だ、お参りさせてもらおう。

観音堂
 「城東観音二十一番札所 十一面観世音菩薩」とある。
城東観音霊場は名古屋城の東に当たる三十三の観音霊場を巡るもので、観音寺が鎮座する名東区では月心寺(二十番札所)がある。

観音堂左の堂は大きく三つに仕切られ、右側に石仏が安置されている。

内部に18体の石像が安置されている。

中央が秋葉山
 御札から見ると熱田区神宮2の円通寺のものだろうか。

左側には邪鬼と不動明王、その奥から睨みを利かせる役行者の姿がある。

台風が過ぎる度に秋が近づいてくる、随分と周りから聞こえる虫の鳴き声も変わって来た。

観音寺
創建 / 1667年(寛文7) 
宗派 / 臨済宗 妙心寺
山号 / 萬松山
本尊 / 釈迦如来
所在地 / 名古屋市名東区上社3-1601
参拝日 / 2022/09/08
津島社 (名東区上社3) から徒歩アクセス / ​南西に5分以内
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