​三重県桑名市住吉町「住吉神社」

三重県桑名市住吉町「住吉神社
国営木曽三川公園「桑名七里の渡し公園」目の前には木曽三川の一つ揖斐川が目の前を流れる。
神社は揖斐川堤防上に鎮座し境内からは揖斐長良の流れ、上流には長良川河口堤や遠く多度の山々を一望できる。

古くは七里の渡し、蛤や白魚等の漁場、木曽三川がひとつに交わる地の利から物流の拠点として栄え、当時の様子は様々な地史の挿絵にも残されています。



住吉樋門。
揖斐川の堤防に設けられた巨大な回転式の水門で内陸の住吉浦を結ぶ。
2002年に設置されたもので、ここから少し上流に1902年に作られた木曽・長良の二つの河川を繋ぐ船頭平閘門がありますが、100年の技術の違いが至る所に見て取れる。

堤防内陸側の住吉浦に残る煉瓦蔵。
三棟の煉瓦造りの蔵は明治20年頃に創建されたもの。
当初は五棟連続の木造蔵だっと伝わり、明治28年に焼失し煉瓦造で再建されましたが、昭和20年の戦災で西側の2棟を失い現在の姿となる。
こうした光景からも舟の拠点だった事が窺われます。


桑名七里の渡し公園の西側に建つ「六華苑」。
西洋化に向け突き進んでいた頃の1913年に実業家の邸宅として造られた洋館、現在は文化財として公開されている。

堤に造られた七里の渡し公園、視界を遮るもののない景観の中に住吉神社が鎮座する。

公園と堤防は県道で隔てられ、堤防側に大きな駐車場が確保されており、車の場合はここを利用するといいだろう。

周辺マップ。
鎮座地は右上になります。

堤防沿いの歩道から見る住吉社全景。
訪れたのは昨年の12/14、この日は寒気が迫る風の強い日で、空模様は猫の目のように変わり、黒雲は雪を持ってくるじゃなかろうかと思わせる陽気だった。
風を遮るものがなく、吹きっ晒しの鎮座地は寒さが身に染みる。

入母屋銅板葺の平入で本殿と拝殿が一体となったもの、棟には外削ぎの置き千木と5本の鰹木が施されています。
遮るものの無い社殿はすっきりとした佇まいで、鳥居の立つ南東に向け参道が伸びている。

社頭全景。
左に住吉神社社標と一対の石灯籠があり、一ノ鳥居は明神、ニノ鳥居と三ノ鳥居は神明鳥居を構えています。

燈籠の竿には天明8年(1788)に寄進されたことを伝えている。
最新の長良川河口堤と3世紀前に造られた燈籠、大きな傷みもなく今も綺麗な状態を保っています。

ニノ鳥居と左の建屋は休息所、雨雲が来たらここに避難だ。

手水鉢(寄進年未確認)。
住吉社の龍は立派な弧を描いた髭と角を持ったもので、目の周りを見ると随分とお歳を召された様子。

住吉神社由緒から
桑名は古くから伊勢湾、木曽三川を利用した広域的な舟運の拠点港「十楽の津」と呼ばれ、木材や米などの集散する商業都市として発展。
ここ住吉浦は、廻船の船溜まりで、全国から廻船業者が集まっていた。
これらの人達により航海の安全を祈願するため、正徳5年(1715)、摂津の國「住吉大社」より勧請し「住吉神社」が建立された。

社頭の石鳥居、石灯篭は江戸時代の材木商が、狛犬は明治中頃に備中や阿波の國の廻船業者により寄進された。
近年、西船馬町鎮座の「玉重稲荷」を合祀、桑名宗社境外末社として西船馬町が奉仕。

平成15年に揖斐川防潮堤の高潮対策として改修整備に伴い、社殿を新たに建替。
往古より、元旦には初日の出が鳥居の真ん中から上がる光景は今も変わる事はない。
伊勢大橋、多度山方面の眺めは、水郷桑名の趣があり七里の渡しと共に水郷巡りの拠点。

住吉神社祭神
 表筒男神、中筒男神、底筒男神
 息長帯姫命(神功皇后)。
合祀
 天照大神(明治40)
 住吉町・東太一丸神明社(明治40)
 倉稲魂命(玉重稲荷)
例祭日
 5月第三日曜日

ニノ鳥居から社殿の眺め。
ここから先の参道は提灯掛けが連なり、祭礼や初詣の時には多くの提灯が吊るされ、参道の趣は増す事だろう。
左側に二つの句碑が立っていました。

社殿全景。
一対の白い狛犬が守護し社殿前に三ノ鳥居。

白が冴える綺麗な狛犬
阿形は玉を咥え、吽形にはやんちゃな子が寄り添う、青空の下なら一層白が際立つだろう。
寄進年を見忘れましたが由緒には明治中頃とありましたが、台座と比較すると白い狛犬は二代目か?

社殿の額「住吉大明神」とある。
大きな流れ沿いで海も近い鎮座地に相応しい神社。
こちらへは志摩に向かう旅の途中で訪れたが、旅も航海の一つ、安全を祈願させてもらいました。

こぢんまりとして瀟洒な外観の社殿。
境内も綺麗に手入れされ気持ちよく訪れる事ができます。

無人のため御朱印の有無は定かではありませんが、近隣の桑名宗社や桑名神社などで尋ねると何か分かるやも知れません。

境内の句碑、地元俳句会が建立したもののようで、「水神に守られ冬も大河なり」とありました。
まさに神に守られている地域です。

境内から社頭の眺め。
この先から昇る朝陽はきっと綺麗なものだろう。

周りに遮るものがない社地だけに、朝な夕なは別の表情を魅せてくれるかもしれない。
風がない時に再び尋ねよう。

住吉神社
創建 / 正徳5年(1715)
祭神 / 表筒男神、中筒男神、底筒男神神功皇后
合祀 / 天照大神倉稲魂命
所在地 / ​三重県桑名市住吉町
公共交通機関アクセス / 近鉄名駅から​東へ徒歩20分程
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