かみさんは狐の化身 「鹿島(かのしま)稲荷社」

名鉄本星崎駅から南へ徒歩十分ほど。
国道1号線鳴尾交番北を左に進む、鹿島(かのしま)稲荷社はその通りの左側に鎮座します。

f:id:owari-nagoya55:20210917152246j:plain 国道から曲がると周辺は工場などが立ち並ぶ一帯となります。
正面は名鉄名古屋本線

f:id:owari-nagoya55:20210917152329j:plainそうした環境の中に鹿島(かのしま)稲荷社がポツンと鎮座する。

f:id:owari-nagoya55:20210917152354j:plain 道路際に南区の史跡散策路の案内板と正面の鳥居から先に赤い稲荷鳥居が奥へと続いている。
社標は鳥居左側にあるが木々に隠れ気味。

f:id:owari-nagoya55:20210917152423j:plain 鹿島(かのしま)稲荷社は別名「久太稲荷」と呼ばれ、創建は四百年ほど前、キツネの化身だった女性をかみさんとして娶った久太夫の子孫が社を建てたという。

f:id:owari-nagoya55:20210917152448j:plain 参道左の手水舎。
手水鉢は古そうですが奉納年までは確認していません。
 

f:id:owari-nagoya55:20210917152516j:plain 南区史跡案内に鹿島稲荷社について以下のように紹介されていました。
天白川砂州が発達して出来たというこの地は、かつて鹿の島と呼ばれていました。別名「久太稲荷」とも呼ばれ、「狐の化身だった久太夫の妻がその正体を子どもに見られ、姿を消す際に恩返しにと一晩で田植えをし、家を出ていった。その年久太夫の田だけ豊かに実った。」という民話が伝わっています」

上は尾張名所図会に描かれた星崎周辺の眺め。
この絵の中には海は間近に描かれ、当時は塩田が営まれていた。
やがて新田開発により海岸線は沖に延び、塩田は水田と移り変わっていったのだろう。
この昔話はそんな頃の話なのだろう、こうした物語は正体が知られると姿を消すのが定番。
「働き者の狐の嫁さんと久太夫はその後も幸せに暮らしたとさ」とはいかないものだろうか。
そんな民話が生まれた水田の広がる光景も、今は工場が立ち並び、長城のような河川堤防と国道を頻繁に車が行き交う。今の風景からは当時の面影は全く感じられない。 f:id:owari-nagoya55:20210917152554j:plain

 鹿島(かのしま)稲荷社本殿。
狐の化身だった久太夫の妻は一説によれば京都の伏見で倒れた女性という説があるといい、伏見稲荷から発祥した神社なのかもしれないという。
高く積まれた石垣の上を赤い覆屋が建ち、その中に檜皮葺の本殿が祀られています。

f:id:owari-nagoya55:20210917152632j:plain 鹿島稲荷社本殿全景。
屋根は多少傷みがあるものの、境内含め綺麗に維持管理され、今も熱心な信者により支えられている事が分かります。
以前は稲荷講があり管理されていたようですが、それも20年ほど前に解散、以降は信者方々により維持されているという。
事実、訪れた時も自転車が停められ境内の清掃活動をされている光景を見た。
管理はそれまでの組織から鹿島稲荷を崇敬する個人に移り変わってきたようです。

f:id:owari-nagoya55:20210917152706j:plain 本殿は流造の檜皮葺で破損を進めないようにネットで養生されている。
社名札は「鹿ノ島稲荷」の表記されている。
屋根以外はしっかりしながら、屋根の痛み具合だけが残念だ、しかし見ての通り立派な覆屋が上を覆っているので吹きっ晒しに比べれば遥かにいい。
トタンで包んでしまうと安価で早いだろう。
反面。味気ないものになるだけに補修の手が入るといいが。
補修技術がある訳でもないので僅かな賽銭を足しにしてもらうしかできる事がない。

f:id:owari-nagoya55:20210917152739j:plain 本殿前には二対の狛狐が守護しています、どちらも栄養状態は良さそうで、時に見かける痩せこけて体の細い悲壮感漂うものではない。
後方には複数の境内社があるようです。

f:id:owari-nagoya55:20210917152808j:plain 本殿右の覆屋。
中には二社祀られ、右は秋葉大神、左ら八幡大神が祀られています。
有難いことに境内社は社名札が掲げられているものが多く考える事がない。
 

f:id:owari-nagoya55:20210917152840j:plain 更に奥は稲荷鳥居が続き、岩を組み上げた一画に祀られた二社を赤の玉垣が囲う、参道はこの二社の外周を周回するように伸びている。
 

f:id:owari-nagoya55:20210917152906j:plain 見えていた二社以外に隠れる様にもう一社祀られていた。 

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 小さな板宮造りの社でありながら、狐の数はこちらは本殿以上に多い。
前掛けが付けられた四対の狛狐が確認できる。
余談ですが、最近こうして低い視線から眺めるのがきつくなってきた。
あわよくば三社を収めたかったがこれが限界、腰と膝が悲鳴を上げるようになってきた。

f:id:owari-nagoya55:20210917153038j:plainこの辺りだと本殿後方が良く見て取れる。
本殿の石垣の左右に大量の白い小さな狐がいる。
 

f:id:owari-nagoya55:20210917153113j:plain 本殿左の二社全景。
この趣は御嶽神社をイメージしてしまう。

左の社は文字神社とある。
聞いたことのない社名、拝み倒すと字が上達するとか?調べて見る価値がありそうです。
右は住吉神社
 

f:id:owari-nagoya55:20210917153157j:plain 本殿西側からの眺め。
日没も早くなり、境内は周辺の建物の影が伸びてきた。 

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本殿。
大きなものではないけれど、素木の流造で脇障子と高欄が付く本殿は堂々とした佇まい。
どうしてもネットに視線が行ってしまう。
創建や再建等は定かではないけれど、言い伝えからすれば随分と古くから鎮座しているようで、祭神は倉稲魂命 

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両脇に子狐たちが寄り添う。 

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本殿から社頭の眺め。
稲荷鳥居は本殿に真っすぐに繋がる感じではなく、本殿後方へ導くように建てられている。
水田が広がっていた当時と様変わりし、現在は工場が林立し周辺の景色は見通せなくなっている。
そんな立地の鹿島(かのしま)稲荷社ではあるけれど、手入れされた境内や日々参拝に訪れる方がいるのを見るとまだまだ途絶えることはなさそうだ。 

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境内で見かけた猫。
途中で姿を見なくなったが、こんな場所でくつろいでいた。
触らしてはくれないが、怪しいおやじは気になるみたいだ。
後ろを走る電車には気を付けろ。

鹿島(かのしま)稲荷社
創建  / 不明
祭神 / 倉稲魂命
境内社 /  秋葉大神、八幡大神、文字神社、住吉神社
所在地 / 名古屋市南区星崎2丁目 
公共交通機関アクセス / 名鉄名古屋本線「本星崎」駅下車、南へ徒歩10分​。
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