前回は「駅から始まるヒラメキさんぽ」のコースから逸れ、中川区中郷の白山神社を訪れました。
本来のルートは県道29号線を西に向かうのですが、先を歩くかみさんは県道を越え、荒子川沿いを北上し高畑公園方向へ、高畑公園を過ぎたあたりから導かれるように西方向に歩いていく。
茨塚公園の南側で店舗を構えるプチ・ポンレヴェックnoda(中川区野田1-323)。
マップ上に赤〇で示しておきます。
某番組で紹介されたみたいで、ひらめき散歩を歩く動機付けのひとつとしてチェックしていたようだ。
最近開業した所謂パン屋さん、ひとつ〃のパンは小さく、一個幾らではなくgram売りなんだとか。
ここで彼女が買い物している間、ここから西へ3分程の場所に神社があったので訪れることにしました。
県道190号線沿いに鎮座する三狐神社。
周辺の建物の越えるほど育った大きな松が三狐神社の象徴かも知れない。
上は大正初期の鎮座地周辺、赤枠が三狐神社で二つの赤い星が野田村三社の鎮座地になります。
何れの神社も明治以前から野田村に鎮座しているのが記されていました。(赤〇はパン屋さんの位置)
ここまで来ると庄内川も目と鼻の先になります。
東向きに石の神明鳥居を構え、右側に「三狐神社」社標が立つ。
境内の樹々は適度に間引かれたものか、この時期は境内が良く見渡せ、手水舎、神馬像、拝殿の先の本殿まで一望できる。
社頭北側から眺める三狐神社。
右側が更地で、社地も白いフェンスで囲われているのもあり、すっきりとした印象を受ける神社。
鳥居から拝殿・本殿の眺め。
拝殿は梁間桁行き三間で四方吹き抜けの瓦葺切妻のもので妻壁などに彫飾りが施されています。
正面の本殿には5本の鰹木が載せられているのが見通せる。
境内右の神馬像。
昭和60年(1985)に寄進されたもので、訪れた際には碑文に目を通すのもいいかもしれない。
拝殿左が手水舎。
三本の鋭い爪、長い髭を持つ堂々とした姿の龍。
拝殿前を守護する
狛犬は、骨太でがっちりとした筋肉質の姿をしたもの。
境内に三狐神社の由緒はなく、詳細が分からず地史に目を通して見た。
尾張志、
尾張徇行記、
尾張名所図会など目を通すが注目する内容は以下のものでした。
・
尾張志(1844年)では
「野田村の
氏神 神明社、
氏神社より東南に八王子社、
氏神社より東にサグジノ社」と記されています。
三狐神社をサグジノ社とすると、
氏神社の鎮座地からほゞ東に位置しており、三狐神社がここで云うサグジノ社のようです。
野田村三社の
神明社は三狐神社から西の野田公園、八王子社は三狐神社から南へ5分程の場所に鎮座しており、何れも歩いて廻れる距離にあり、マップに示した赤い星が其々の鎮座地になります。
・
尾張徇行記(1822年)の一柳庄野田村に「三狐神社」として名が記されいました。
中郷村の
神明社・三狐神社・八王子社を指して「この三社、創建年は不明なれど再建は寛文7年(1667)」と再建の時期が記されていた。
再建年度だけを捉えれば、かなり古くから鎮座している神社のようです。
愛知県
神社庁にも紹介されていましたが、内容は祭神、祭礼日に留まっていた。
三狐神社の祭神は
豊受大神を祀る神社です。
ここで
尾張志の「サグジノ」が気になってきます。
サグジノと聞くと、万物に宿る自然神を崇敬する
ミシャグジ信仰を思い浮かべます。
三狐神社の前身が
ミシャグジ信仰から始まったのか?となると、それを示す記述や崇敬対象となるようなものを境内で見かける事はありませんでした。
この神社の見所は、拝殿妻壁をはじめ全周に施された彫飾りだろう。
人目を引く派手な飾り金具などの意匠はないけれど、正面の大きな二匹の龍からはじまり、蟇股の干支や木鼻の獅子などシックな佇まいの小さな拝殿ですが作り手の拘りを感じる意匠が施されています。
それらを見ていく前にまずは参拝。
大嫌いな蛇をはじめ全周に干支のキャラクターが施されている。
柔らかな鶏の尾羽も良く彫られている。
上は猪に犬だろうか、下の正面妻壁には宝珠を握りしめた龍、その上には兎の姿もある。
拝殿から本殿の眺め、本殿は板宮造りで、棟には外削ぎの置き千木が置かれています。
拝殿内正面に三狐神社の額と右側に昭和51年に奉納された白馬の奉納額が掛けられています。
三狐(さんこ)神社本殿、最初に三狐の社名から受けた印象は宇迦之御魂神をお祀りする稲荷かと勝手に想像していましたが、愛知県神社庁では「さんこ」とあり、境内からも稲荷社ではないようです。
本殿域を小さい体の二対の可愛い狛犬が守護しています。
寄進年は分かりませんが、手前の愛くるしい姿をした陶製狛犬は、左の阿形は前脚が欠け落ち台座に置かれており、玉乗りの吽形に至っては頭部が欠落した痛々しいもの。
結構古そうな台座の上に載せられた狛犬をよく見れば、鮮やかに色付けされ、細かな装飾が施されているだけに、寄進者や作者の思いが込められた造形物は、新しく変えようかというのもなんだか重い。
金継ぎとはいかないまでも元の姿に戻してやりたいものだ。
覆屋の下に祀られた本殿全景。
こちらでも寄進物の寄進年度は見忘れてしまった。
拝殿下り棟の鬼には三狐の文字が入る。
社殿全体は大きな傷みもなく、比較的最近補修されたようです。
境内も綺麗に手入れされ、居心地のいい神社でした。