讃岐の麦畑の中で出会った小さな『天神社』

香川県坂出市加茂町「天神社」
町名の由来は京から勧請した東加茂神社、西加茂神社がある事から、その社名が町名になった様です。
西を流れる綾川の少し南には讃岐国府跡もあり、古くからこの地方の中心地だったようです。

朝ご飯で立ち寄った讃岐うどんがもう」、その開店前の時間を利用し長閑な周囲の光景に魅かれ歩いて見ました。人並の中に身を置きたくなかったのも理由かもしれない。

f:id:owari-nagoya55:20200412090332j:plain 駐車場から伸びる小道を少し南下しただけで周囲は緑も鮮やかな麦畑に変わります。
畑の遥か先には烏帽子山や霊峯五色台が間近に迫っています。
さわやかな朝を迎えた静かで長閑な田園風景が広がります。
前方を県道180号線が左右に伸びているけれど交通量も少ないようです。

f:id:owari-nagoya55:20200412090359j:plain 穂が出て間もない麦畑の先に小さなお堂が見えてきます。
グーグル先生が教えてくれた「天神社」です。

f:id:owari-nagoya55:20200412090421j:plain 「天神社」の詳細は全く分かりませんでした。
それで終わりたくないので100年前とほぼ現在の地図から比較してみました。
結論から言えば小規模である事から、明治39年の地図で存在は見つけられませんでした。
西を流れる綾川がもたらした土壌を生かし、当時の加茂村一帯は一面に田畑が広がり、そこに集落が点在する農村地なのが分かります、「天神社」が祀られているのは集落の北外れ。

現在は住居の数も増え、田畑には新たに道路も整備されながらも、農村地の光景を留めた環境は、宅地開発され家屋が軒を連ねる町に住む者から見ると羨ましい限り。

f:id:owari-nagoya55:20200412090453j:plain 朝陽に赤く染まる天神社。
畑の一部を整地してお堂が建てられています。
入母屋瓦葺の手入れされたお堂、長閑な周囲の光景に違和感なく溶け込んでいます。
集落の中に祀られた身近な存在なのが伝わってきます。

周辺の道は、車だと都会の守られ過ぎた道路事情の様に一方通行、対面通行、ガードや側溝の蓋などはないので、譲り合う気持ちと本来の運転をしなければ、側溝や田んぼに落ちるかも。
駐車余地も全くありません。

f:id:owari-nagoya55:20200412090522j:plain 「がもう」から​歩いて5分​ほどで堂前に到着。
そこで一際視線を引きつけたのは、朝陽で赤く染まる石灯籠。
綺麗に形作られた灯篭にはない、自然石を生かして積まれた素朴な灯篭は、赤く照らされた色合いのように温もりが伝わってくる姿です。
竿に当たる部分には明治19年(1886)と彫られています、やはり地図には落とされなかったようです。

f:id:owari-nagoya55:20200412090553j:plain 手水鉢は灯篭の9年後に奉納のようです、いつ頃から「天神社」はここにあるのかね。

f:id:owari-nagoya55:20200412090618j:plainグーグル先生によれば「天神社」とあります。
だとすると菅原道真を祀っているということでしょう。

f:id:owari-nagoya55:20200412090642j:plain 天神社は「天神信仰」から来ているようで、もとは田畑を潤す雨をもたらす火雷神を祀っていたようですが、冤罪をかけられ九州に送られ、後に他界した菅原道真の怨念が、清涼殿落雷事件で画策した者に災いをもたらしたとする伝説があり、いつからか道真が天神様とされるようになったとか。
天神様なら牛の姿があっても良さそうなものですが、外観も、参拝後に窺った堂内も小さな社は見えますがそれを感じさせるものは見つけられませんでした。
そんな天神社ですが堂内は綺麗に維持され、人が出入りされている様子。
地域の住民をつなぐ役割を担っているようです。

f:id:owari-nagoya55:20200412090710j:plain 天神社の東方から西の眺め、こちら側も綾川の先には山が迫っています。
讃岐国府跡は右手の綾川上流方向に車で5分程のところにあります。

f:id:owari-nagoya55:20200412090736j:plain 牛は見落としているのかなぁ、必ずしもつきものではないでしょうが気になる。
畑の脇に植えられたこの木、桃の様にも見えるけれど、桃色に膨らんだ蕾の一部は花を咲かせていました。
讃岐の麦畑の中で出会った小さな天神社は赤く染まっていました。

天神社
創建 / 不明
祭神 / 菅原道真
住所 /    香川県坂出市加茂町
車アクセス /  高松自動車道「府中湖スマートIC」から県道184号線⇒県道18号線⇒坂出・丸亀バイパスを超え県道180号線経由。 ​所要時間約10分