「三輪恵比須神社・金比羅神社」

奈良県桜井市三輪『恵比須神社
日本で最古の神社とも云われる大神神社、広大な三輪山そのものを御神体とするため本殿を持たない神社。
桜井の町に聳える大鳥居が印象に残る神社で親しみを込めて三輪明神とも称される古社です。
今回掲載する『恵比須神社』は、大鳥居から続く長い参道の一本南に伸びる上街道(伊勢本街道)沿いに鎮座します。

上は観光マップに上街道を赤線、大鳥居と大神神社を青枠で示し、赤丸が恵比須神社の鎮座地です。
大鳥居脇の大神神社第2駐車場に車を停め、綱越神社の前の三輪街道を東に進みます。
街道の面影が残る三輪の町を歩く事10分弱で恵比須神社社頭に着けるはずです。

恵比須神社社頭全景。
訪れたのは4月4日、散りゆくばかりの枝垂れ桜が辛うじて残ってくれていた。
「日本最初市場 三輪坐 恵比須神社」の社標と由緒が掲げられた左から境内に入れますが、鐘楼の建つ右側が正参道でその先に鳥居を構えています。

左から車で入れそうですが、駐車が許されているのか定かではありません。

「日本最初市場 三輪坐 恵比須神社由緒略記
御祭神 
八重事代主命、八尋熊鍔命、夜奈留美
御由緒
当神社は八重事代主命(三輪明神御子神)他二柱を奉斎し、日本最初の市場海石榴市(つばいち)の守護神として、悠久の昔創祀せられ「つばいちえびす」と称えられエビス信仰の本源をなす大和の古社であります。
顕幽両界に亙って働かれるご神徳が敬仰されています。
主要祭事
初市祭 宵宮 2月5日、本戎祭 2月6日、御湯祭 2月7日
夜市祭 8月13日
例祭(秋の大祭) 10月14日」

八重事代主命大神神社の御祭神の大物主大神御子神で、国譲りの談判交渉の際、大物主大神に代わって大役を務めたことが神話にも語り伝えられています。
海柘榴市(つばいち)は三輪山南麓を流れる初瀬川(大和川)沿いの金屋の地で物々交換の市として始まったそうで、海柘榴市の守護神として神社も祀られましたが、延長4年(926)の大雨により初瀬川が氾濫、それを契機に市は三輪の地へ移され、守護神も三輪に移されたのが今日の恵比須神社のようです。
市の賑わいは平安時代の「枕草子」や「万葉集」にも記され、市の始まりと共に三輪の繁栄を護り続け、市場神社や日本最初市場の神とも称され、商業や産業の守護神として、古くから伝わる祭りとともに現在も篤く信仰され続けています。

参道から境内の眺め。

まずは右側の桜と神仏習合時の名残を残す鐘楼に目が行きます。
参道左が手水舎で正面に狛犬と石の明神鳥居が立っています。

鐘楼。
間近で梵鐘の銘を見ていないので年代は不明。

手水舎と左奥に見えているのが社務所

大きな龍がいますが撮り忘れていました。

手水舎脇の碑。

内容は以下。
「当神社の手水舎は、もと正徳2年(1712)に市場の繁栄を祈願して三輪村下市中の寄進によって造営されました。
その頃の当神社は、おおいに繁盛した三輪市(上市・下市) の守護神として、また広く市の神として、商人達の崇敬を篤くし、特に初市には全国各地から参集した豪商達で賑わったと伝えら れています。
三輪の茶屋を舞台とした近松の「冥途の飛脚」が初演されたのもこの頃のことです。
このたび、氏子草敬者の寄進によって当時の手水盤を基に復元し、正徳の昔をしのぶと共に未来の繁栄を祈るものです。
昭和7年(1932)10月
日本最初市場 三輪坐恵比須神社

参道脇の狛犬と鳥居。

蔓柏(つるかしわ)の神紋が入った前掛けを着けられた狛犬
誇らし気に微笑むかのような阿形の狛犬は、恵比須さんの表情にも見えてくる。

鳥居の額は「恵比須神社

参道を覆う様な枝垂れ桜は鮮やかな葉桜に装いを変えていました。
花の時期はさっぱり読めなくなってきました。

境内右の恵比須神社社務所
当日は無人御朱印は頂けなかった。
左手に見える巨樹は樹齢600年とも云われる御神木の欅夫婦欅で、名の通り根元から幹が二つに分かれており、寄り添いながら共に大きく育つ姿から、この樹に触れ願をかけると良縁の御利益を頂けるようで、安産や子宝にも恵まれるという事です。

拝殿左の琴平神社

拝殿正面全景。
恵比須神社の由緒では創建について「延長4年(926)7月の大雨により初瀬川が氾濫、それを契機に市は三輪の地へ移され、守護神も三輪に移された」とあります。
神社の社伝には「大風、長谷山崩レ、海石榴市ニ至リ、人烟悉ク流レシニヨリ、市場ヲ三輪ニ開クニ及ビ、市神モココニ遷シ祭ル。是レ即チ当神社ノ創祀ニシテ」と記されているようで、現在の惠比須神社の始まりは延長4年(926)としてもいいのだろう。

大和川氾濫前の海石榴市は、大和川右岸を15分程遡った三輪山南麗の金山町にあったとされ、日本書紀では欽明天皇13年(552)、百済の使者がこの地に釈迦仏の金銅像や経典を献上したと記される事から、この地は仏教伝来の地として大和川沿いに顕彰碑が建てられています。
山の辺の道や幾つかの古道が交わり、大和川を行き交う船着き場として、人・物が集まりやすい立地だったようです。
惠比須神社の元となる護神が祀られた時期となると更に遡る事になる。

拝所から拝殿、本殿方向の眺め。

にこやかに微笑む大黒天とえべっさん

琴比羅神社社頭全景。

琴比羅神社由緒。

「御祭神 大物主神
例祭 7月9日
日本で最初に開けた海柘榴市(つばいち)ゆかりの流れを汲む恵比須神社の境内に祀られ、いわゆるエビス・ダイコクのダイコクとして、増殖・蓄財のご神徳が仰がれています。」

本殿域全景。

左の石灯篭の柱に寄進年らしき文字が見えますが、いろいろ加工しても読み取れなかった。

本殿前を守護する小柄な狛犬には〇金の前掛けがかけられている。

琴比羅神社本殿は銅葺屋根の流造で千鳥破風が付く。
創建時期など詳細は不明。

棟には5本の鰹木と外削ぎの置き千木が付き破風側の棟にも鰹木と千木が施されています。
棟飾りには〇金。

琴比羅神社左に佐藤春夫が海柘榴市を訪れ詠んだ「海柘榴市の 野道に飛び交ふ 蟲や何 」の句碑。

三輪の初市
「JR三輪駅の西に位置し、旧指定村社の恵比須神社がある。
本殿には、天正15年(1587)銘の「上棟城上郡三輪市場恵美酒宮」と書かれた棟札が残っている。
2月6日の初市祭は現在でもにぎやかで、この時にこの年の三輪素麺の価格が決められる。
日本書紀』の海柘榴市の伝統を残しているとの説もある。」

古くは六日市とも呼ばれ、旧暦の正月6日の前後三日間で執り行われ、現在は初相場奉告祭として三輪そうめんの標準価格を神様に告げるようです。
そうめんもピンキリで味音痴の自分にはその違いがよく分からない。

三輪恵比須神社境内全景。


恵比須神社
創建 / 延長4年(926)
祭神 / 八重事代主命、八尋熊鍔命、夜奈留美

摂社 金比羅神社

創建 / 不明
祭神 / 大物主神

大神神社第2駐車場から徒歩 / ​10分程
所在地 / 奈良県桜井市三輪375
参拝日 / 2023/04/04
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