上野大佛と大佛パゴダ

上野東照宮の参拝を済ませ次の目的地に向かう道すがら、上野恩賜公園の小高い丘に「上野大佛」の案内板が目が止まる。
「大佛」さまと聞くとあの大佛さまを思い描くが、こちらの大佛はそのイメージとはかけ離れたもの。f:id:owari-nagoya55:20200607120826j:plain

公園歩道脇の「上野大佛」の案内板とその先の小高い丘は大仏山と呼ぶそうで、その上に仏塔が建っています。
 

f:id:owari-nagoya55:20200607121037j:plain小高い丘に続く階段を登ると絵馬掛けと祠があり、大仏さまが見えてくる・・・・・そう思い描いていた。見渡してみても仏塔はあれど、それらしきものは見当たらない。

f:id:owari-nagoya55:20200607121058j:plain階段左の祠に視線を向けると、そこには仏様の大きな顔のモニュメントが安置されています。
左に上野大佛とある、これが大佛さまのようだ。
絵馬掛けには「合格大仏」と書かれ、合格を祈願する絵馬が掛けられています。
これだけ多くの願いを叶えなきゃいけない、大仏さまは静かに目を閉じ、優しい表情はしているがさぞかし大変な事だろう。願いが叶った暁はお礼参りもお忘れなく。

それにしても大佛は誇張し過ぎではないかい?
傍らに解説があり、それを読むと何故合格大仏と呼ばれているのか、大佛が誇張ではないことを知ることができる。
 

f:id:owari-nagoya55:20200607121120j:plainそれによれば、発端は1631年(寛永8)に当時の越後の国の村上城主だった堀直寄により、敵味方なく戦乱で亡くなった者の冥福を祈る目的でこの地に粘土を漆喰で固めた釈迦如来像を建てたことから始まる。

漆喰造りの像は1655~60年(明暦~万治)に江戸住民の浄財を基に木食浄雲僧により青銅製の釈迦如来坐像へと改められたそうです。合格大仏の所以の始まりです。
解説によればその高さは6㍍にもなる銅仏で1698年(元禄11)には大仏殿も作られていたという。
その後1841年(天保12)の火災で大仏さま、大仏殿も被災、1843年(天保14)に堀直央が大仏を修復、大仏殿は時の幕府により再建され、その後も天災や火災を繰り返したそうだ。
1873年(明治6)に上野公園造営に伴い大仏殿は解体され大仏は露わになります、そしてあの関東大震災が起きその際に大仏の顔の部分が剥落してしまったようです。
被災した大仏さまは寛永寺で保存され修復の時を待つも時は第二次大戦。
冥福を祈るシンボルは大仏さまの顔以外は全て軍に供出されます、二宮金次郎やお寺から梵鐘が消えた時代です。それら本来の姿から兵器に姿を変えました。
大仏さまの顔は1972年(昭和47)にこの丘に現在の形で安置されるようになった。
幾多の災難、戦禍に巻き込まれながら姿を変え、顔だけになった大仏さま。
「これ以上落ちるところはない」として合格祈願として親しまれるようになったらしい。
 

f:id:owari-nagoya55:20200607121142j:plain感染病で自国第一主義の傾向が少なからずも垣間見られた昨今。
国会のTV中継も減り、痛みを伴わない集団の誰が何を語り、説明もそこそこに、物事進められていく。今の若い衆やその次の世代が迎える世の中を考えると妙に危うさしか感じえない。
大仏さまがこれ以上地に落ちる事無く、穏やかな顔でいつまでもここにいてほしいものだ。

f:id:owari-nagoya55:20200607121203j:plain穏やかな表情の合格大仏、その右に存在感のある仏塔が建っています。
パゴダと呼ばれる仏塔だそうだ、内部に薬師如来、脇侍の左側の月光菩薩、右側の日光菩薩像は旧上野東照宮にあった薬師堂のご本尊とある。
明治政府の発布した神仏分離令により上野東照宮から寛永寺に移管されていたものをパゴダ建立に伴いこちらに安置したものだそうだ。

f:id:owari-nagoya55:20200607121222j:plainこの塔は1923年(大正12)の関東大震災で被災した大仏の跡地を利用し、1967年(昭和42)に上野公園の名所として高さは15㍍のパゴダを建立したもの。
 

f:id:owari-nagoya55:20200607121242j:plainこの内部に旧上野東照宮にあった薬師堂のご本尊薬師如来月光菩薩日光菩薩像が祀られています。
薄暗い内部、正面に薬師如来と脇侍の月光菩薩日光菩薩像を拝むことができます。
この絵、いろいろ加工してみるも姿は現れませんでした。建物は新しいけれど、一見の価値ありです。

2020/2/20

上野大佛
 建立 / 1631年(寛永8)
大佛パゴダ
 建立 / 1967年(昭和42)
本尊 / 薬師瑠璃光如来
脇侍 / 月光菩薩日光菩薩
住所 / 東京都台東区上野公園8
公共交通機関アクセス / JR山手線​​「上野」下車西に徒歩10分程
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