「父父夫國総鎮守 秩父神社」(​埼玉県秩父市番場町)

先に掲載した群馬県太田市徳川町の徳川東照宮を後にして、今回の旅程の最終目的地埼玉県の「父父夫國総鎮守 秩父神社」に向け、最寄りの「道の駅ちちぶ」​を目指してひとっ走り、移動時間は約70分程。

道の駅から徒歩10分程で秩父神社社頭に到着。
秩父神社前交差点の北角に位置し、右手に国幣小社秩父神社の社号標が立ち、大きな石の鳥居とその前を守護する大きな狛犬が視界に入る。

骨太で胸板の厚い凛々しい姿の狛犬は、写真から大きさは伝わらないが、台座を含めると見上げるほどの高さがある。

上は栞にあった境内マップ。
広い境内は神門を境に大きく二つに分かれ、鳥居をくぐった先の境内は手水舎、神楽殿、神馬舎が建てられています。

手水舎脇の秩父神社由緒、内容は以下。
秩父神社
当社は市の中央柞の森に鎮座し秩父地方の総社であり、延喜式神名帳にものっている。
二千有余年の歴史をもつ関東屈指の古社であります。
人皇十代崇神天皇の御代、知々夫彦命がその祖神八意思兼命を奉祀したのに始まるといわれております。

一、御社殿
現在の社殿は天正二十年德川家康の寄進により建立されたもので、見事な権現造りです。
特に、「つなぎの龍」と子育ての虎は名工「左甚五郎」の作といわれています。
一、御祭神
八意思兼命(政治、学問、工業、開運の祖神)
知和夫彦命(郷土開拓の神)
天之御中主神(宇宙創造神、俗に北斗七星の神として夢見様といわれる)
秩父宮雍仁親王
一、神祭礼
二月 節分祭(古式による鬼やらい行事が行われる)
四月 四日御田植祭
七月二十日 夏祭り(川瀬祭り)、 悪疫祓いの行事神輿を荒川にもみ込み、屋台笠鉾も曳きまわされる。
十二月三日 秩父夜祭り(冬季例大祭)、 日本三大曳山祭の一つで国指定重要民俗資料秩父祭屋台、笠鉾六基が県指定無形文化財秩父屋台ばやしのりズムに乗って街中を夜を徹して曳かれる。」

手水舎。
銅葺屋根の切妻で第一印象は地味に見えますが、妻壁などには細かな彫が施されています。

妻壁と梁の彫飾り。

彫の深い獅子が描かれた木鼻。

桁の装飾、手水舎ながら手間を掛けて作られています。

龍は不在ですが、平成の名水百選の水源に名を連ねる武甲山伏流水が滾々と湧きだしています。

左手の入母屋銅葺屋根の建物で、重要無形民俗文化財に指定されている秩父神楽が奉納される。
楽殿右に見える石段は白虎門の入口。

参道先の神門は左右に透塀と連なっており、その先に拝殿の姿がある。

神門。
現在の門が築かれた年代は紹介されておらず不明ですが、切妻瓦葺で朱塗りの四脚門は上品な華やかさを漂わせている。

拝殿。
入母屋銅葺屋根で千鳥破風、唐破風向拝、周囲に高欄が付き、各所に金色の飾り金具が施されている。
壁面の周囲に施された華麗な彫飾りに視線はひきつけられる。
権現造の社殿は永禄12年(1569)に戦禍により焼失、後の天正20年(1592)、徳川家康により寄進されたもので、江戸時代初期の様式を留めていることから、埼玉県の有形文化財に指定されています。

拝殿左(西側)の白虎門と右の石は神降石。
この辺りに東向きに2社、南向きに1社の境内社が祀られています。

左が柞稲荷神社。
祭神は商売繁盛の神、倉稲魂命。例祭日は3月第二日曜。
右が諏訪神社
祭神は風水守護、旅行安全の神、建御名方神、八坂刀賣神。

南向きの1社は日御碕宮。
祭神は悪疫退散の神、須佐乃男神。例祭日は7月20日

日御碕宮後方に聳える秩父御柱、左の解説は以下。
秩父神社大祭
信州諏訪本宮に倣い、境内諏訪社も香場町民挙りて例大祭宵宮に「山出し」された「御柱」を当所南方より番場妙見通りを「里曵き」し同日夕刻「建御柱」を執行するものなり
第一回昭和63年卯歳9月26日、第二回平成4年申歳9月26日、第三回平成10年寅歳9月26日、第四回平成16年申歳9月26日、第五回平成21年丑歳9月26日、第六回平成27年未歳9月26日」

右の建物は神様にお供えする食事の準備を行う神饌所。

秩父神社拝殿正面の眺め、鮮やかに彩られた彫物は拝殿のみならず本殿にも及ぶ。

拝殿正面の彫飾り。
左右の4間に4頭の親の虎と2頭の子供の虎が描かれ、否が応でもその姿は視界に入ってきます。

子宝・子育ての虎(左甚五郎作)。
正面左の二間の右側に描かれているもので、子虎とたわむれる母虎の姿が描かれており、左甚五郎が子育ての大切さ、家康の威厳とご祭神を守護する神使として彫ったものと伝えられています。

拝殿左側(西面)。

拝殿左側(西面)。

幣殿左側(西面)。

本殿左側(西面)。

本殿左側(西面)の龍の左下の三猿。
日光東照宮の「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿の姿とは違い、「よく見て・よく聞いて・よく話す」を現しているとされ「お元気三猿」と呼ばれるもの。

拝殿右(東面)の彫飾り。
西側の松に対し東側のこちらは梅が描かれ、東西で対になるのか?

幣殿右側(東面)。
色鮮やかな彫飾りは、秩父神社御鎮座2100年奉祝事業として2019年から本殿の修復が作業が始まり、
昨年拝殿正面の修復を終え、2023年10月の作業終了を目指し、現在は本殿北側の修復作業が行われていました。

本殿右側(東面)。
少しデザインは違いますが西面と同じように色鮮やかに彩色された龍の姿がある。

つなぎの龍。
左甚五郎作でこの龍の彫飾りには不思議な伝説が伝わるという。
「その昔、秩父札所15番少林寺近くに「天ヶ池」と呼ばれる池があり、そこに棲みついた龍が夜な夜な暴れ、その際にはこの彫刻の下に水溜りが出来たという、この彫物の龍を鎖で繋ぎ留めたところ、その後龍が現れる事はなかった」という伝説がある。
古来地域の四方は青龍・朱雀・白虎・玄武の四神が守っていると信じられ、この彫刻も表鬼門にあたる東北を守護している。
(因みに西の門は白虎門と呼ばれていますが、東門もありますがそれは青龍門とは言わないようです)

本殿後方(北側)から拝殿方向の眺め。
参拝当日はネットで覆われ修復作業中で見る事は出来ませんでしたが、この面には、体は南、頭を北に向けた北辰の梟が描かれているという。
修復作業を垣間見たが、おやじの日曜大工の塗装とは違い、剥離・修復・下地処理が入念に行われ、手間と根気のいる地道な作業が続けられていた。

本殿の両横に祀られている社。

本殿左側に祀られている伊勢の外宮・豊受大神宮、祭神は豊受大御神、日の神に仕え五穀豊穣の神様。

本殿右側に祀られている伊勢の内宮・皇大神宮天照大御神、日本の総氏神様。

天神地祇社。
本殿後方の東西に長い社で両脇に額殿が付く。

社の中央にある解説は以下。
天神地祇
平安時代から中世にかけて、朝廷の「二十二社」奉幣制度と共に、全国毎に「一ノ宮」「総社」の運営、祭祀の尊重が図られるようになりました。
かつて秩父地方は、知知夫国として独立した存在でありましたが、その当時には既に武藏國に属しており、現在の東京都府中市に鎮座致します大国魂神社(別称六所宮)が武蔵国の総社とされ、その第四ノ宮に当社のご祭神が奉祀されました。
 
古くから当神社の境内社の一つとされて参りましたこの天神地祇社は、全国の一ノ宮(計七十五座) お祀りしています。
これほど多くの一ノ宮の神々を、境内社としてお祀りしている事例は全国的にも珍しいものと思います。
何故、このような形でお祀りされたのかは定かでは ありませんが、一説によると当社のご祭神である八意思兼命が多くの神々の意見を緩められ、折々の ご聖断を下される神様として古典神話の中で活躍されていることから、たくさんの一ノ宮の神様がお祀りされたとも云われています。
ともあれ、これも秩父の歴史風土に深く根差した独自の信仰の表れであると云えるかもしれません。
 
この天神地祇社それぞれのご神前にお参りすることによって、合せて全国の一ノ宮を遙拝することになります。」

埴山大神・田村大神・石上大神・軻遇突智大神、若狭比古大神・大物忌大神・罔象女大神・句句津馳大神、津島大神・真墨田大神・金山大神・木船大神、天手長大神・和多津美大神・杵築大神・枚聞大神・丹生大神、南方大神・安房大神・中山大神・安任大神・箱崎八幡大神、砥鹿大神・都々古和気大神・白山比咩大神・籠大神・西寒多大神、伊射波大神・寒川大神・香取大神・倭文大神・鹿児島大神、松尾大神・都佐大神・春日大神・粟鹿大神・伊和大神。
中央に天神地祇社。
そこから右に続き、加茂大神・大鳥大神・鹿嶋大神・出雲大神・吉備津大神、三輪大神・都波岐大神・二荒大神・玉前大神・渡津大神、宇佐八幡大神・都濃大神・玉祖大神・水無大神・宇倍大神、高良大神・高瀬大神・住吉大神・建部大神・由良姫大神浅間大神大麻比古大神・枚岡大神・貫前大神・龍田大神、氣多大神・熊野大神・敢国大神・氷川大神、弥彦大神・厳島大神・阿蘇大神・氣比大神、廣瀬大神・三島大神・物部大神・事麻智大神。
全て順番通り表記したが順番は少し怪しいかもしれない。

随分巡拝して来たつもりですが、部屋に貼ってある全国一ノ宮マップが塗り潰せないでいる、ここで全国の御朱印が頂ければ(頂けません)ここで良いんじゃない?、フリマで手に入れればいいんじゃないと思いたくなるが、巡拝しての御朱印だし、訪れなければ出逢えない感動もある。今回訪れた貫前神社秩父神社の2社は訪れてこそのもの。

境内東に柞の禊川と呼ばれる澄んだ流れがあります。
古来秩父神社の社叢は「柞の杜」と称されていたそうで、それに因んでこの御手洗川を柞の禊川と呼ぶのだという。
その付近の境内に西を向いて三社が祀られています。
右から東照宮、祭神は徳川家康
中央が菅原道真をお祀りする天満天神社。
左が禍津日社、祭神は禍津日神

境内から神門、社頭の眺め。
左側には社務所、神馬舎があります。

東照宮右側にスロープがあるので、石段を上ることなく境内にアクセスが出来ます。

今回の旅も秩父神社で終わりを迎えます。
道中諏訪湖から一山超えた山間の集落で、水田に佇む神社を見かけたのが気になり、あわよくば夕焼けが写り込んだ神社の姿が見られるかと同じ道を辿ったが、それはちょっと無理があった。
名古屋まで決められた法定速度で350㌔、先は長い。

父父夫國総鎮守 秩父神社
創建 / 崇神天皇10年
祭神 / 八意思兼命(政治・学問・工業・開運の祖神)、知知夫彦命(秩父地方開拓の祖神)、天之御中主神(北辰妙見として鎌倉時代に合祀)、秩父宮雍仁親王(昭和28年に合祀)
所在地 / ​埼玉県秩父市番場町1-3
道の駅ちちぶから徒歩10分
参拝日 / 2023/05/12
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