「小島八剣神社​」輪中の郷に鎮座する神社を訪ねて#4

三重県桑名市小島、小島 八剣神社。
前回掲載した中川の八剣神社から小島 八剣神社へは、木曽川右岸の堤防道路と並行して走る一般道を南下し、東名阪自動車道をくぐった先の小島集落に鎮座します。

いつもの様に赤のマーカーが鎮座地になります。
この地図もそろそろ限界かな。
小島八剣神社の西側まではセンターラインのある広目の道路ですが、神社はそこから一本東の筋になり、そこからの道幅は普通に狭い。

社頭全景。
鳥居左に一台分の駐車スペースがあるようですが、三叉路の交差点角になり、中途半端に停めると交通の妨げになります。

社頭は南向きに神明鳥居を構え、右に手水舎がありその右に大正3年(1917)寄進の「八剣神社」の社標があります。

鳥居から境内の眺め。
周囲は大きな樹々で囲われていますが、境内の日当たりは良く、風の通りもいいのでこの時期気になる蚊の心配はなかった。

鳥居から先の石段を上がった先に境内が広がり、拝殿と鞘殿が建てられています。
手前の常夜灯の寄進年は昭和61年(1986)のもの。

境内左に小島八剱神社の由緒があり、内容は以下。
「元和年間(十七世紀はじめ)まで東川村と称されていた小島村(現・小島)はもともと中川村(現・中川)の八剣神社の氏子でした。
熱田神宮別宮の八剣宮の祭神・熱田大神(神体・草薙神剣)を祀る同社は1553年(天文22)に創建されました。
伊勢の神宮・内宮を総本社とする神明社でなく、熱田神宮ゆかりの八剣神社の氏子であったことは、このあたりが当時、伊勢国より尾張国の文化の影響を強く受けていたことを表しています。
ただし、東川村の人々がいつ同社の氏子になったかは定かではありません。

 
中川村の八剱神社は、その後、兵乱と洪水によって荒廃しました。
1586年(天正14)に発生した天正地震は、長島城の天守を倒壊させるなど甚大な被害を及ぼしたので、その 影響を受けた可能性もあります。
当時、東川村にあったとされる稲荷社(由緒不明)も全壊したと記録されています。
1589年(天正17)、東川村の人々は中川村(現・間々)、殿名村の三ヶ村の人々とともに、中川村に八剣神社を再興しました。
 
時代が下るとともに長島の開発は進み、各村の人口も増加、経済力も向上しましたので1651年(慶安4)の殿名村、1766年(明和3)間々村に続き、1793年(寛政5)に小島村も分配して現在地に八剣神社(当社)を造営し、その氏子となりました。

同年に遷宮が行われ、中川村の八剣神社の旧社殿を譲渡されたことが棟札から分かっています。
遷宮式典は1795年(寛政7)に実施され、その後、現在に至るまで小島の人々に崇敬され、大切に守られています。
1887年(明治20)、1917年(大正六)、1953年(昭和28)、1986年(昭和61)に遷宮が行われました。
1953年建立の旧本殿は現本殿東隣に保存されています。
 
穀物の神とされる宇迦之御魂神を祀る稲荷社が1761年(宝暦11)に、海上安全に御利益があるとされる金毘羅大権現を祀る金比羅社が1839年(天保10)に、それぞれ勧請されましたが、1915年(大正4)に両社とも本殿に合祀されました。
 
境内の南東角には薬師堂があります。
小島のある人が、出水後に木曽川で拾い上げた薬師如来木像を祀るため、1954年(昭和29)年に建立されたと伝えられています。
毎年9月には薬師祭が催され、延命地蔵院(西川)の住職により法要が営まれています。
 
境内の南に立つスダジイの古木は日通り約430㌢の巨木で、複数の幹が癒着して一体化したものです。
小島の人々は古くからこの木を神聖なものとしてに大切にしています。
このスダジイの西隣には1959年(昭和34)年の伊勢湾台風後まで木造の石取祭車庫がありました。
1817年(文化14)に桑名宗社の氏子である某町で作られた祭車が、長島の他地区に保管された後、小島村のものとなって保管されていました。
伊勢湾台風で祭車庫が被害を受けたのを機に、桑名市宝殿町に売却され、現在も「宝町」が使用しています。桑名石取祭に参加するものとしては最古の祭車です。
 
小島では1890年(明治23)から養蚕が始まり、1897年(明治30)年には稚蚕の共同飼育が始まりました。
1960年(昭和35)には小島稚蚕共同飼育場が当社境内の南東角に建設され、養蚕が行われなくなった後は集会所として利用されていました。

当社では以下の祭事が行われています。
1月・祈年祭(初湯)、5月・農上祭(農神) 、9月・大祭、新嘗祭、薬師祭、10月・小祭、稲荷祭」

中川八剱神社の由緒もそうですが、こちらの小島八剣神社も、起こりから現在に至るまで分かりやすく纏めて掲示されているのに驚くと共に、この後参拝して行く神社でも同様の由緒が掲げられていました。

境内西側から社殿全景、拝殿右奥の建物が旧本殿。

拝殿前を守護する狛犬、寄進年は昭和28年(1953)。

拝殿全景、入母屋瓦葺の妻入りで、大棟に桐と菊の紋が入る。

拝殿外観とマッチした味わいのある額は「八剣神社」

後方の本殿全景。
岩を組み、高く築かれた本殿域に鞘殿が建てられています。

鞘殿は切妻瓦葺で本殿の造りは不明です。
降り棟の先端に波を模した飾り瓦がつき、火事、水害の災いから逃れたい、その現れだろう。

集会所左の注連縄が張られたシダジイの古木、樹齢は不明。
複数の幹が一つとなっているさまがよく分かる、なんとなく核家族化が進んだ今を風刺しているようにも見えてくる、「一人より二人、寄り添えば強くなる」とでも語っているようだ。
幹の上や朽ちた枝は押さえられていますが、幹は今も新芽が青々と芽吹いています。

小島八剣神社
創建 / 1793年(寛政5)
祭神 / 熱田大神、宇迦之御魂神、金毘羅大権現
所在地 / ​三重県桑名市小島421​ 八剱神社より南下4~5分程
参拝日 / 2023/07/21
関連記事 /